エンタープライズ・セールスの鍵は企業を理解すること

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本日の記事は、a16zのニュースレターであるFutureよりGary Hobermanさん、 Derrick Harrisさんによる「The Key to Enterprise Sales Is Understanding Enterprises」の翻訳記事となります。

スタートアップ企業が規模を拡大するためには不可欠なのが、大企業に対しての大規模な取引です。そのような案件を実行するにあたって、スタートアップ側の担当者はどのような点に気を付け、どうすれば最適にリソースを投入していくことができるのでしょうか。

翻訳記事の中でも記載がありますが、Unqorkの創設者兼CEOであるGary Hobermanさんは企業するまでは、MetLifeでグローバルCIOを勤めたり…といった大企業でのキャリアも構築されている方です。

そんなGaryさんに向けてインタビュー形式でディスカッションしている記事になります。

オリジナル記事はコチラから⏬
https://future.a16z.com/the-key-to-enterprise-sales/


Unqorkの創設者兼CEOであるGary Hobermanさんは、起業に至るまで数十年にわたりウォール街でコードを書き、巨額の予算を管理する(前職はMetLifeの執行副社長兼グローバルCIO)変わった道を歩んできた人物です。彼曰く、その経験は自分と彼の会社であるノーコードアプリケーションプラットフォームを成功に導くためにできる最善のことだったそうです。

Hobermanさんは、Futureとのインタビューで、大企業の中で働いた経験が、いかにその後の大企業に対する取引を容易にしたかをご説明し、企業との取引を成立させようとしている他のスタートアップ企業へのアドバイスを提供しています。また、スタートアップ企業への最適な投資方法と、大企業で働くことの長所、短所、秘訣についても語っています。

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FUTURE:ウォール街のCIOからスタートアップの創業者になるというのは、かなり急激な変化のように思えます。なぜ、そのような決断をしたのでしょうか?

GARY HOBERMAN氏:私はいつも、「Cスイートからの飛躍」と呼んでいます。社用ジェット機から、機内持ち込み禁止のユナイテッド航空のゾーン5へ行くことです。(要は確立された地位を捨てて挑戦すること、みたいな意味なのかな?)

しかし、Garyさんは大学院を出てすぐに、文字通りウォール街でキャリアをスタートさせました。彼は、テクノロジーは魔法のようであり、問題を解決することができるという考えが大好きでした。そして、ウォール街のお金の動き、つまり取引所やトレーディングなど、ミスをするとビジネスにとって致命的になるような業務ほど、テクノロジーが活躍する場はないと感じていました。ミスは許されないのです。

そこでGaryさんは、このような問題をどうやって解決するかということに挑んだのです。

そして一方では、どこで働いていても、それを実践していました。その問題を解決していたのです。しかし一方で、それは特定のグループや機能、部門、あるいは会社の中でのことでした。200年以上の歴史を持つ企業の中でスタートアップのようなものを作り、プロセスを改善できるという信念を生み出す、いわゆる「intrapreneurship (企業内企業制度)」はやりがいがありましたが、自分で作らない限りトンネルの先に光はないと思い、会社を辞めました。

CIOとして、Garyさんは西海岸に飛びました。シアトルやカリフォルニアにあるエグゼクティブ・ブリーフィング・センターで、大手のハイテク企業のCEOと会い、彼らが取り組んでいること、目指していることを聞きました。また、ベンチャーファンドにも会って、ポートフォリオのピッチを聞いたりしました。そして、Garyさんがいつも聞いていたのは、私たちはいまだにパンチカードマシン以来の方法でソフトウェアを作っているということです。しかし、私たちの周りでは、クラウドコンピューティング、インフラ、セキュリティ、データベースなどの規模が大きくなっています。

さらに重要なのは、彼が費やした費用の80%(年間12億ドル)が、いわば “明かりを灯し続けるだけ “に費やされていたことです。あなたが取り組んでいたプロジェクトは、もう既にEOL (End Of Life )を迎えたプロジェクトでした。「Microsoftが新しいものを開発するためにEOLにするんだ。いいね、それを解決するために100万ドル、あるいは1000万ドル、あるいは1億ドルを費やすんだ」というように。

一方、残りの20%、つまり会社を前進させる新しいもの、セクシーなものは、カスタムコードで行われているのです。レガシーコードばかり作っていたのです。本番稼動した途端、突然レガシーに分類され、もはや新しいものではなくなってしまったのです。他のものと同じようにメンテナンスし、EOLを迎えなければならないのです。それが、Garyさんの気づきでした。

組織によっては、政治が大きな意味を持つことがある。...現状を守り維持するために存在する企業内の組織を軽視してはいけません。

「intrapreneurship」とおっしゃいましたが、大企業がスタートアップの経験をどれだけ真似ることができるのか、あるいは、企業は自分たちの存在を受け入れるべきなのでしょうか?

Garyさんとしても、ある程度は同意見です。銀行は銀行なのです。Microsoftより多くのエンジニアを抱えていたとしても、ハイテク企業ではありません。しかし、現実には、彼は中央集権的なイノベーションはあまり意味がないと思っています。イノベーションは、誰もが自分のチームや機能の中で、どうすればいいかを考え、実行すべきものです。

例えば、2008年の金融危機の最中、Citigroupの株価は急落し、私たちはイノベーションを起こす方法を必要としていました。私はCIOに売り込みに行き、「ビルの中にイノベーションのためのラボを作る必要がある。そのような現状を目の当たりにして、まだ新しいものが生まれつつあることを感じてほしいのです。」と言ったことを覚えています。そして、CIOの10分の1の予算で、Rethink Inc.ラボと名付けた施設をつくりました。そこが私たちのイノベーションの場となり、多くのことを成し遂げました。

しかし、成功するためには、自分の周りで起こっている政治を理解する必要がありました。これは、スタートアップの世界とは全く異なるものです。Unqorkでは、政治も官僚主義もBSもありません。

組織によっては、政治が大きな意味を持つこともあります。そして、会社を作る人は、会社の中にある、現状を守り維持するための組織を軽視してはいけません。Garyさんはそのような組織の外側と内側を見たことがありますが、その中には恐ろしくなるような話もありました。

少し話題を変えましょう。B2Bのスタートアップが大企業に売り込むために知っておくべきことは何でしょうか?どのようにすれば参入できるのでしょうか?また、商談を成立させた後、どのような落とし穴に気をつけるべきですか?

私が企業のことをよく理解しているからかもしれませんが、まずはTier1のお客さま、Tier1の問題から始めなければならないと考えたのです。Tier1とは、フォーチュン100やフォーチュン250に選ばれているお客様のことです。最大規模で、契約するのが最も難しい顧客です。コンプライアンスやセキュリティについて1,500ものアンケートを取られ、現場でのチェックも行われます。Tier1の問題は、通常、誰も近づかせてくれない問題です。パッケージソフトでは解決できないため、カスタムコードでしか解決できないような問題です。

私は、どんなスタートアップ企業にも、この戦略をお勧めします。なぜなら、現実には、プラットフォームを成功させ、プロダクトマーケットフィットとTier1の顧客と問題に対する機能を見つければ、他の下流はみんな簡単だからです。他のすべての産業も簡単で、投げかけられる他のすべての問題も簡単になるのです。その代わり、多くの企業は単純な問題から始めて、「よし、シンプルな製品を作ったから、それを複雑な問題に使おう」と言うのです。そして、それはうまくいかないのです。

私たちは、お客さまとのミーティングに参加したときに、「私たちより大きくて、私たちより複雑な問題を扱っているのは誰ですか?」と言われたときに、答えられるようにしておきたかったのです。また、私たちよりも複雑なユースケースはどのようなものがありますか?なぜなら、彼らはスタートアップの創業者であるあなたやあなたのチームに対して懐疑的であろうからです。

ソフトウェア・ライセンスの押し売りのようなことをするのではなく、価値を提供するような形で進めていくことが重要なのだと思います。多くの企業は、価値のないライセンスを押し付けるだけで、組織を傷つけているのです。私は、企業を作る皆さんには、大企業向けに販売することをお勧めします。企業が達成できるような価値に焦点を当てることです。その価値を見て、その価値を体験してもらうのです。なぜなら、それが成功につながるからです。

そして、もし取引がうまくいかなければ、断ることも賢明なビジネス上の決断です。簡単なことでも、大きな付加価値をもたらさないという枠にはめられたり、追い詰められるのは嫌でしょう。

あなたのクライアントで現実に起こることは、転職があることです。 . . . そして、そのクライアントのプロジェクトが突然、彼らにとって重要でなくなり、後回しにされたとき、あなたのビジネスはアウトになるのです。

大企業は懐疑的であるというお話がありましたが、その逆はどうでしょうか。大企業がスタートアップと関わりを持とうとするとき、何を理解する必要があるのでしょうか?

企業でうまくいかないのは、スポンサーやコミットメントがない場合、あるいは本当のビジネス価値につながるものがない場合だと思います。私たちはすべてのお客様に、「とにかくチャレンジしてください。エンジニアにコーディングさせたい、最も困難なことは何ですか?」とお伝えしています。もしあなたが大企業と仕事をしているスタートアップで、プロジェクトがどこにも進まないと感じているのなら、おそらくその通りでしょう。

逆を言えば、企業は現実にある問題にテクノロジーを適用する必要があるということです。すべてのビジネスでは、すべてのテクノロジー・プロジェクトをビジネス・ケースとして扱う必要があります。この資金を投資し、見返りを期待するのです。ある調査によると、企業で開始された大規模なテクノロジー・イニシアチブの93%が価値を提供できていないそうです。

ですから、スタートアップ企業と仕事をするときは、意義のあるもの、つまり、彼らが成功したときに、あなたの株主と会社に真の価値を提供できるようなものを割り当ててください。中途半端なことはしないことです。試しにやってみる、ようなことではダメなのです。なぜなら、それがうまくいくかどうかを理解せずに、スポンサーとして、そこからどこに向かって前進させれば良いのでしょうか?そして、その推進をどのように支援するのでしょうか?

スポンサーや社内リーダーの存在については、まさにご指摘の通りだと思います。そのような関係はどの程度重要なのでしょうか?

ある投資家候補は、「1つのクライアントを選んで、こっそりと、それを本番稼動させ、それから次のクライアントに行け」と言いました。会社勤めをしていたGaryさんが言うのもなんですが、それは誰からも言われないような、絶対的に悪いアドバイスです。

なぜでしょうか?結局のところ、それは紙の上では理にかなっているのです。しかし、現実の世界でクライアントに起こることは、仕事の変化です。優先順位の見直し、予算の見直し、削減、規制の問題など、あなたがコントロールできない外部要因が発生するのです。そして、そのクライアントのプロジェクトが突然、彼らにとって重要でなくなり、後回しにされた時、あなたのビジネスは終わりを迎えるのです。

私たちは、異なる業界の5つのクライアントを同時に担当することで、彼らのニーズをすべて理解することから始めました。これにより、1つの会社の変化に左右されないので、リスクを軽減することができます。

スタートアップの世界では、企業の世界で起きている痛みや苦しみを知っている人がもっと必要です。

では、これからエンジニアとしてスタートする人が、スタートアップの世界と企業の世界のどちらを選ぶべきか、アドバイスをお願いします。

Garyさんが学んだことの最も大事なことは、朝起きて、自分がやっていることを楽しむことです。どんなことであれ、自分がやっていることに情熱を感じなければならないのです。

でも、最初の数年間は、一生懸命に働くことです。何をやっているかは関係ありません。Garyさんの最初の仕事は、他人のコードをデバッグすることでした。これほど退屈なことはありませんが、実は、優れたエンジニアになるための方法を学んだのです。実際に正しくコード化されているかどうかを確認する方法を学んだのです。また、何を作ればいいのか、何が楽しいのかを知るためには、いろいろと経験する必要があります。

大企業に行くことを恐れず、そこで変化を起こし、それに興奮することです。スタートアップの世界では、企業の世界で起きている痛みや苦しみを知っている人がもっと必要だと言えるでしょう。それを理解しなければ、解決することはできません。Garyさんがこの会社を始めたのは、大企業と競争するためではなく、大企業が成功し、自らの道を切り開くために力を与えるためです。そして、その経験をいつも心に刻んでいます。


本日の記事は以上となります。

私を含めて多くの方はなかなかスタートアップで働いたり、協業する経験というのは少ないのではないでしょうか?何となくでは、スタートアップ企業・大企業それぞれの特徴やビジネスドライブの相違点を分かっているつもりでしたが、どちらの組織にも属していたGaryさんのお話を聞いて非常に勉強になる点が多いように感じました。

欧米だけなのか、日本もそんな流れが来るのか分かりませんが、
アメリカ圏では大手テック企業に就職することよりも、自分でスタートアップを立ち上げることの方が”クール”に思われているのかな、という印象があります。(日本なんかは軽減されているものの、やはり大企業へ就職するのが安定、企業は変わり者…みたいなイメージが残っていることは否めないかと思います。)

すぐにスタートアップで働かなくとも、そういった背景を知っていることは重要なのかなと思いました。そんなところで本日の記事は終わりになります。

それではまた明日!!

Source:https://future.a16z.com/the-key-to-enterprise-sales/

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