本日の記事はLeon Zhangさんによる、「The real reason Facebook is changing its name to Meta」の翻訳記事となります。筆者のLeonさんはAmazonのUXデザイナーとして勤務した過去もありますので、デザイナーから見たMetaの戦略や今後の展望を解説しています。
社名変更後のMetaがメタバースを意味していることは明らかですし、Meta自体がその領域にフォーカスしていこうとしているのは自明の事実です。その過程の中で、メタバースというvirtualにおける巨大世界を構築するとき、Metaはどのような世界を目指しているのでしょうか?メタバース領域を本格的に舵を切るMetaにとって、競合企業はどこなのか?手を取りあうべき相手はどの企業なのか?
Leonさんのデザイナー的視点からご説明していきたいと思います。
オリジナル記事はこちらから↓
https://uxdesign.cc/the-real-reason-facebook-is-changing-its-name-to-meta-what-you-must-know-from-facebooks-2021-e8f12cdc797c
Facebookの2021 AR/VRカンファレンスから知っておくべきこと

この記事の著者であるLeon ZhangさんはVRインタラクションデザイナーとIsekai Entのインディーゲーム開発者として、Steam VRとOculus向けのタイトルを立ち上げている方です、
彼らの所属する私たちSword Reverieチームの最大の楽しみは、最新のVRキットを「無料で」郵送してもらうこと以外に、10月28日に開催された年次AR/VRカンファレンス「Facebook Connect 2021」に参加することでした。
昨年ほどテクニカルなものではありませんでしたが、今年のFacebookも期待を裏切らないものでした。カンファレンス全体を通して、マーク・ザッカーバーグ本人から、まさに未来を最前列で見ることができたのです。

テック系のニュースに少しでも触れている人なら、Facebookが正式に「Meta」に社名を変更したことをもうご存知でしょう。以下は、Zuckerberg氏のコメントです

「これからは、”メタバースファースト “を目指します。Facebookファーストではなく」とザッカーバーグは基調講演で述べた。
「Facebookは世界で最も利用されているプロダクトの一つです。しかし、まだまだFacebookは我々が行うすべてのものを包含していません。今、私たちのブランドは1つの製品に強く結びついていて、私たちがやっていることすべてを表すことはできないのです」
Leonさんが働いているSword Reverieチームの全員が、このカンファレンスを1つの言葉で表現するとしたら、それは「Future-Driven(未来志向)」でしょう。開発者、デザイナー、あるいは単なるテック好きとして、2022年に向けてMeta(Facebook)が私たちにもたらすものについて知っておくべき3つのトピックを紹介します。
- VR/ARゲームの未来
- 日常生活においてのVRの未来
- 投資家、消費者、開発者、それぞれの明るい未来
VR/ARゲームの未来
グランド・セフト・オート(GTA )がVRの世界にやってきます。そしてそれを提供するVRデバイスは他でもなく、Oculus Questです。
FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏はGTA:San AndreasのVR化について、「この象徴的なオープンワールドをバーチャルリアリティで体験する全く新しい方法」と説明しています。
現在、oculusヘッドセットの主なセールスポイントの1つはゲーム用で、これが大きな消費者市場であることは間違いないでしょう。Zuckerberg氏が、消費者や投資家を満足させるために、VRのこの側面に触れるのは当然のことです。
GTAがQuest 2に移され最初のクラシックなコンソールゲームになるわけではなく、現在ではバーチャルリアリティ用に一人称視点のゲームになったバイオハザード4のバージョンがすでにリリース済です。とはいえ、今日の発表はビッグニュースであり、特にRockstar社からではなく、Zuckerberg氏自身から最初に聞けたことは大きいでしょう。

ゲームコミュニティにとって、携帯性は高いものの、現状ではまだ技術的な制約が多いのがQuestです。しかし、Questのアクセシビリティと使いやすさは、間違いなくFacebookが今後の方向性として決定したものでしょう。
このようにFacebookがQuestをサポートしたということは、Isekai entで働くSword Reverieのスタッフにとっては大きな驚きではないでしょう。Oculus社との投資ラウンドの際、Leonさん達はすでに少し前に、FacebookがよりポータブルでアクセスしやすいゲームヘッドセットQuestに主にアテンションを向けていることを聞いていました。

Sword reverieや今後のVRタイトルのためにQuestへ移行しやすくすることは、将来的にもきっと念頭に置いていることでしょう。実際、『blade and sorcery』のように、これまでQuestでのリリースは無いと明言していたVRタイトルが、数日後に発売されるケースもあります。
そこで、VRゲーマーとして、あるいはヘッドセットを買おうとしている人として、あなたはこのVRの方向性に賛成ですか?より良いハードウェアや全方位型トレッドミルなどのデバイスを通じて、より没入感を得たいとお考えますか?
(全方位トレッドミル…レディープレイヤーのような感じかな…)
日常生活においてのVRの未来
投資家に感銘を与え、消費者にヘッドセットがXboxやPlaystationのような単なるゲーム機器ではないことを納得させるために、Oculusが社会的なつながり、ビジネス、生産性などの生活をどのように変えることができるかの例とビジョンを共有することは、当然、今年のカンファレンスでZuckerberg氏がスポットライトを当てていた大きな領域でした。
Covid以前にも、LeonさんがGoogleのインターンシップで、daydream VRのチームとマッチングした際に、遠隔会議のデザインスペースに取り組むことになったことがあります。(NDAの関係でここではあまりシェアでき無いようですが…)

VRの生産性とVRオフィススペースは、今や新しいアイデアではないと言えるでしょう。多くのスタートアップ企業などが、VR技術を活用して「より広いオフィス空間」を持ったり、マルチモニターを設置して生産性を高めたりすることのメリットを実験してきました。
しかし、今回のカンファレンスでZuckerberg氏は、slackやzoom、messengerをVRで使うという具体的な例をたくさん出してきたのです。
要は、これはVRでビジネスを立ち上げる方法です。(これは「技術的なデモ」というより、マーケティング材料や投資家を乗せるためのもののように思えるのは、おそらく誰もが認めるところでしょう)

Meta(メタバースの略)の名の通り、VRの力でゲーム、ソーシャル、仕事のすべてを指先ひとつで簡単に切り替えることができるのです。(これらの”予告編”では、スマホ、ウェアラブルなど、クロスデバイスの利用も多いことをご覧ください)

Leonさんはこれにはデザイナーとして大賛成だそうで、まずは大きく・広く考えることが重要です。
VRのパワーは、ゲームをはるかに超えて成長し、スケールアップすることは間違いないでしょう。実際、VRが主流になれば、社会的な交流の新しい方法として行動科学さえも変化・適応し、進化する可能性が高いでしょう。VRのためのデザイン、開発、プロトタイピングは、かつてないほど容易になりました。
(以下は、Leonさんが過去に作成したVRを活用した学校のプロジェクトです。)

もしあなたが学生なら、VRを利用する現実の能力とVR機能の探求を始めることは、この分野での競争力を維持し、”次の大きな出来事 “をキャッチする可能性を秘めた素晴らしい方法となるでしょう。
投資家、消費者、開発者、それぞれの明るい未来
素人目には、Oculusが現在考えている唯一の競争相手が "Epic games "であることは興味深く、理解しがたいかもしれません。

Epic Gamesは、Unrealエンジンと世界No.1のバトルロイヤルゲーム「Fortnite」を開発した企業です。(フォートナイトの話題や最近のアップルとの訴訟で聞いたことがあるかもしれません)
では、Oculusは、steam VR、HTC Vive、Google、あるいはその他のテック企業の巨人を主な競合相手と見なすべきではないでしょうか?
答えはNoです。この記事で何度も述べたように、今年のカンファレンスの主な聴衆の1つは投資家です。ザッカーバーグ氏は「自分たちは競合他社より何年も先を行っており、VR製品の研究開発にすでに多くの資金を費やしているため、それらの企業は自分たちの競争相手にはなり得ない」と主張したいのです。(Facebookが大金を稼いでいるのは事実ですが)Facebookは現在も、そしてこれからもこの分野で大きな利益を上げると考えられるので、新しいVRヘッドセットのスタートアップが追いつことは簡単ではないでしょう。

フォートナイトは約70億ドルの年間売り上げを生み出しています。
これは、Epic games傘下の1つのビデオゲームに過ぎないので、かなりの額です。しかし、Facebookの年間売上高856億ドルという巨額の収益と比較すると、大したことはありません。
では、なぜEpic gamesを持ち出したのでしょうか?

Epic Gamesが所有するUnrealエンジンは、VR開発支援に力を入れています。同社の超ヒットゲーム「Fortnite」は、このプラットフォーム上に構築されています。Epic gamesがSteamに対抗するためにEpic games storeを持っているのと同じです。もしEpicが独自のヘッドセットを発売しようとすれば、実は独自の競争優位性を持っているのです。
Leonさんがそう考えるのには以下の理由があります。記事の最初の方で、”Oculusがゲームユーザーを惹きつけるために新しいゲームを追加している”と度々強調したのを覚えていますか?Epic Gamesは、アンリアル・エンジン・プラットフォームと大人気のジャンル(Fortnite)を所有しており、これは、大規模な課金ユーザーのグループが既に確立されていることを示しています。(無料プレイのビデオゲームから70億の収益があったことを覚えていますか?)ですから、おそらくいくつかの推測で、Epic gamesは確かにVRプロジェクトに取り組んでいると結論付けることができ、もし彼らが何かを始めるとしたら、Oculusにとって競争上の大きな脅威となることは間違いないでしょう。

しかし、LeonさんたちSword Reverieチームの全員が、EpicとOculusが正面衝突することは、最も可能性の高い結果ではないと考えています。
Leonさんが推測するのは、EpicはおそらくOculusと多くのハイレベルな関係者会議を開き、コラボレーションについて、また、VRでFortniteのクリエイティブを使った真のメタバースを作るためにお互いがどのようにサポートできるかを話し合っているのだと考えています。
VRの人気が高まっている今、Fortniteは、Appleストアで起こったようなモバイルのユーザー市場全体を失いたくないはずです。
過去にSword reverieのデザイナーであり、現在一緒に働いているUXコーチの一人であるHannahは、現在FortniteチームのUXデザイナーとして働いています。NDAのため、彼女は何をやっているのか、極秘のVR Fortniteコラボがあるのかどうか、確認することはできませんが…。
しかし、ひとつだけはっきりしているのは、『フォートナイト』がよりソーシャルな体験になりつつあるということです。
フォートナイトがこれほどまでに成功したのは、単純なバトルロイヤルゲームをはるかに超える成長を遂げたからです。それ自体がメタバースなのです。(フォートナイトは現在、自らをフォートナイト・メタバースと呼んでいますが、Facebookが自らをメタバースと呼ぶのと似ているところがあるのではないでしょうか?)

フォートナイトでは、アリアナ・グランデのライブコンサートを見たり、なりたい自分になったり(DCからマーベル、プレデターからターミネーター、アニメからウィル・スミスまで、本気でなりたい自分になることができます)、友達と遊んだり、自分の街を作ったりすることができます。

先ほどのFortniteの話は聞き覚えがないでしょうか?Oculusが目指すゴールとほとんど同じに感じませんか?その通りで彼らには重なる部分がたくさんあります。

Leonさんの純粋な憶測ではありますが、OculusとEpicのコラボレーションは、可能性が高いと言えるでしょう。
デザイナーであり、Fortniteの熱心なファンでもあるLeonさんにとって、これは素晴らしいニュースでした。FortniteとOculusが作り上げてきた既存のメタバースに、Ready player oneスタイルの未来が構築されたら、とても楽しみですし、その中で新しい空間の中で最先端のデザインを生み出すことは非常に待ち遠しいことです。

最後に
今後のLeon Zhangさんの記事やアドバイスなど、お気軽にフォローしてください。
VRの始め方やデザインの世界についての質問は、LinkedInでつながっておしゃべりしてください!Leonさんは言うなれば超のつくデザインオタクです。
本日の記事は以上となります。
今は未だ制約の多いメタバースという世界ですが、OculusをはじめとしてMetaはその世界でのビジネスの種を着々と蒔いていました。記事の後半にもあるように、EpicとMetaは競合企業にもなり得ますが、その2つの会社がコラボレーションすることでメタバースという市場自体をより早くスケールすることは可能になるのではないかと思います。その点でザッカーバーグ氏がどのような選択をしていくのか、期待して待ちたいと思います。
今日はこのあたりで終わりにしたいと思います。
それではまた!
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