本日の記事は、Leon Zhangさんによる「Why Tesla Bot & Amazon Astro show the future of interaction is here」の翻訳記事となります。
この記事はAmazonでもUXデザイナーを経験されたLeonさんが、デザイナーを目指す方や興味のある方に向けた記事となります。
ホンダがASIMOを開発してから早20年以上たちましたが、徐々にIoTが浸透しているものの、ドラえもんで思い描いたようなロボットと人間が共存するような世の中は今のところ来ていません。しかし、そんな世の中はどんどん現実のものになっており、彼らロボットが人間や他のロボットと共生する際に大切になってくるのが、ロボットとの「連携」という部分になります。
これはUXと同じベクトル上にはあるものの、現時点の消費者向けロボティクスに比べるともう1つ高次元のものとなることは確かです。そのような世界が近づいている中、ロボティクス分野においてデザイナーを志す方々がどのような点に注視していくべきなのか、解説していきたいと思います。
TeslaのAIショーケースに対する最初の「誇大宣伝」が落ち着き、スマートホームのIOT愛好家たちは、999ドルの新しいAmazon Astroをすでに手に入れたかもしれない今、デザイン業界における消費者向けロボティックスにおける長期的な影響について、著者のLeonさんの考えが共有されています。

多くの人にとって、テスラのAIデーは大規模な勧誘のように見え、Amazon Astroは「車輪のついた高価なAlexa」にしか見えません。しかし、ダンスするテスラロボは、ショーを主役をいとも簡単に奪い、真の「マスクファッション」で未来を垣間見せてくれたことについては、誰もが同意することでしょう。
下の動画に見られるAstroの可愛らしさも、誰もが歓声をあげてしまうでしょう。
あなたの考えがどうであれ、1つだけはっきりしていることは、消費者向けのロボティクスがやってくるということです。この記事では、デザイナーとしてTesla BotやAmazon Astroに興奮した理由、そしてロボットとロボットのインタラクションを理解することが、UXとインタラクションデザインの未来をどのように形成してきたかを紹介していきます。

ロボットのライバル関係
ロボットとロボットのインタラクションが、顧客、製品、そしてデザインの世界に与える影響を理解するためには、まず、Teslaの最大のライバルとされているAmazonを訪れる必要があります。
当初は、イーロン・マスク氏とジェフ・ベゾズ氏の友好的なTwitterのやり取りから始まりましたが、今ではポケモンの水タイプとほのおタイプのような本格的なライバル関係になりつつあるようです。
Space X vs Blue originという最近の出来事から、Amazonの自動運転技術の買収まで、両社が将来的に同じケーキの一切れを取り合うことは明らかです。
なぜ、Tesla Botとの関係でAmazonを見る必要があるのでしょうか?
ご存じない方のために説明すると、AmazonはAstroよりずっと以前から、間違いなく世界最大の「ロボット」雇用者の1つでした。

現在、Amazonのグローバル・フルフィルメントセンターでは、10万台以上のロボットが働いていることをご存知でしょうか?
これらのロボットは、単なる組み立て作業を補助するロボットではなく、アマゾンの成功を支える完全自動化されたロボットなのです。
その成功の秘密は?それは、本日の大きなテーマである「ロボットとロボットのインタラクションのためのデザイン」にあります。
ロボット-ロボットのインタラクションデザイン
ここで簡単に歴史の勉強をすると、Kiva Systemsを吸収したAmazon Roboticsは、倉庫でのロボットアシスタントの利用で特許を取得しただけでなく、機械学習の利用でその効率を大きく進化させました。
2012年以降、アマゾンのすべてのフルフィルメントセンターでは、ロボットが協力して顧客からの注文を捌いています。これにより、フルフィルメントプロセスの時間が大幅に短縮されました。まだ人間はいます。(まだターミネーターに登場するSkynetのような完全なAIではありません)
しかし、このテクノロジーにあふれた環境で働く人間は、より「難しい」仕事に集中し、すべてのロボットは完全に自律的に働くようになりました。
このロボットとロボットの相互作用の効率を高めるために、Amazon Roboticsは、収納やその他の動作の何百万ものビデオ例を基に訓練したディープラーニングベースのコンピュータービジョンシステム、Intent Detection Systemを設計・構築しました。短く簡単に言うと、これらのロボットは、互いに協力し合うことでますます効率的になるのです。
機械学習とAI
ロボットとロボットのインタラクションを向上させるための機械学習とAIというテーマは、今回の主人公であるTeslaを振り返りながら続いていきます。
TeslaのイベントにAI dayという名前があるように、Teslaはずいぶん前からAIに関しての研究を重ねてきました。彼らがAIを訓練して改善するために注力した分野は、今回もロボットと人間のインタラクションではなく、ロボットとロボットのインタラクションだと言ったら驚かれるでしょうか?
OpenAI 5をご覧ください。

OpenAI 5は、数年前にMusk氏によって作られ、ゲーム界を席巻しました。わずか数年の進化と訓練で、OpenAI 5はdota2で世界のトップe-sportプレイヤーの99.99%を倒すほどの進化を遂げました。
約10年前のGoogleのAlpha goのような他のAIと比較して、なぜこれほどまでに大きな進歩を遂げたのでしょうか?
Alpha Goは、かなり複雑なボードゲームにおいて、世界最高の囲碁プレイヤーを打ち負かすほど賢かったのですが、Alpha Goはまだ個々のAIにすぎませんでした。
囲碁と比較すると、まずDota 2は複数の点ではるかに複雑です。Dota 2 はリアルタイムで 5 対 5 の多人数参加型ゲームであり、その対戦ルールは大きく異なります。5対5ということは、5体のAIやロボットが協力する必要があるということです。
Dota 2の何百ものヒーロー、アイテム、アビリティを使いこなすには、どんなプレイヤーでも何年もかかるものです。プレイヤーはミクロとマクロの両方で考え行動する必要があり、多くのスキルベースのアイテムや自動でロックオンされないアビリティを使用する。(つまり、現実の銃や剣と同じように、狙いを定めて相手プレイヤーの行動を予測しなければ、ヒットさせることはできません)。
さらに、囲碁と違ってプレイヤーが10人で各チーム5人、つまり5人のAIは、他の5人の人間のプレイヤーの行動を予測しながら、自分の攻撃を調整するために協力し合わなければならないので、この難易度は10倍にもなります。
これがゲーマーが言う「チーム戦」の要素です。このチーム戦は瞬時に行われ、しかも多様で、無限の可能性が刻一刻と広がっています。delta splitを必要とするアビリティもあれば、特定の順番でスキルを重ねなければならないアビリティもあります。(どれも非常に複雑で、完璧なコミュニケーションを必要とします。)
Leonさんのようなゲーマーは、たった数年後に5台のロボットが世界で最も複雑なビデオゲームの1つにおいて、世界最高のプレーヤーに勝てるようになるとは、本当に信じられませんでした。
この例は、ロボットの能力が無限であることを示すものです。ロボットは、人が想像できる最も複雑なタスクを解決するために協力することができます。これからは、1台のロボットが1人の人間と対話するのではなく、複数のスマートなロボットが一緒に対話することで、どのような体験ができるかをデザインすることが重要なのです。
これを聞いてもまだ納得できないですか?
最後にもう一つ、Boston dynamics Spotの例を見てみましょう。

ロボットの面白いパルクール動画やパロディ動画以外に関しては、Boston dynamics Spotは、ロボットとロボットのインタラクションに焦点を当てた、消費者向けのデザインの好例と言えるでしょう。
以下の素晴らしいビデオで、これらのスポットがどのように連携できるかをご覧ください。
これからデザイナーやデザイン学生を目指すあなたにとって、このことが何を意味するのか。
これらのロボットとロボットのインタラクションプロジェクトをポートフォリオに含めてみてください。

機械学習、AI、ロボットの連携というと、あまりに未来的な話に聞こえるかもしれませんが、怖がらないでください。消費者に広く使われるようになる未来は、もうすぐそこまで来ているのです。モバイル、デスクトップ、ウェアラブル、VRのデザインと同様に、ロボットのインタラクションデザインも、UXデザイナーが探求すべき巨大で新しい「開拓時代」となる日は近いでしょう。
もし、推測の域を出ないのであれば、今日からロボットとロボットのインタラクションのデザインを体験することも可能です。
現在のデザイナーが、ホームセキュリティや他の製品との連携といったIOTデザインに取り組んでいるのと同様に、消費者向けのロボットアシスタントが市場に溢れたとき、ロボットとロボットのインタラクションデザインのためのコアインタラクションを理解することは、これらのIOTシステムのパターンに非常に似ているとLeonさんは考えています。

Amazon Astroはその最たる証拠です。現在、AmazonはRingやその他多くの家庭用IOTプログラムを所有しており、Alexaのようにこれらのデバイスをリンクさせることは、ロボット間のより複雑なネットワークを設計するための最初のステップとなり得ます。より良いユーザー体験を生み出すタッチポイントとして、システム内の各技術をどのように活用できるかを考えてみてください。
わかりやすい例としては、携帯電話からGPSの位置情報を共有するアプリを作成した場合、自宅に近づいたタイミングでAsrtoが玄関まで迎えにきて、あなたから食料品の袋を受け取るのを手伝ってくれるというようなことが考えられます。
ただ、AmazonとTeslaは、新しい「宇宙開発競争」を面白がってやっているわけではないことを覚えておいてください。彼らは、ロボットのためのインタラクションデザインの重要性を理解しているのです。問題は、デザイナーであるあなたがその準備ができているかどうかです。
今回の記事は以上となります。
AmazonやTeslaが今後どのようなロボット開発競争を繰り広げるか楽しみな限りですが、それらのロボットが市民権を得ることができるかどうかは、ロボットのUXにかかっていると言っても過言ではないと思います。単純作業を支援するだけのロボットから、ロボット同士が意思をもつインタラクティブな使用用途に広がっているのかと思うと、アニメの世界がどんどん近づいていることを感じます。
デザイン分野の記事もこのブログではいくつか扱っていますが、仮想世界のメタバースや現実世界ではロボットとのインタラクションなど、空想だけでしか実現できないと思っていた世界を実際の作り上げていくデザイナーの方がいることは、テクノロジーの進歩において欠かせないなぁ、、、とあらためて感じました。
といったところで本日の記事は終わりにしたいと思います。
それではまた明日!
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