そんなPC業界の常識を打ち破り、Appleをクールで魅力的なブランドに押し上げたプロダクトであるiMacの歴史をデザイン視点を中心に遡ってみます。
今回も、Apple ExplainedがYouTubeで公開している動画、iMacの歴史(History of the iMac)を参考に、iMac G4からiMac Proまでのプロダクトをご紹介します。
iMac G4

2002年1月に「Macworld Conference & Expo/San Francisco 2002」にて発表されたiMac G4は、今までのモデルから大きくフォルムチェンジすることで、再び世間の話題をさらうこととなります。
PIXARのアニメーションの冒頭部分に登場するランプのLUXO jr.を彷彿とさせるこのでデザインは、ドーム型のベースから伸びた可動式アームに液晶ディスプレイが付いており、デザイナーのジョナサン・アイブ氏によれば「重力に逆らっているようなデザイン」と言われます。
そのデザイン性の高さは、Macファンの間だけではなく、世間からも認められており、ニューヨークの近代美術館(MoMA)に収蔵された10点のApple製品のひとつとなっています。

Appleがこのような大胆なデザイン変更を行った背景には、iMac G4からのディスプレイの仕様変更が大きく関わっていると考えられます。
iMac G3まではブラウン管を使用したディスプレイでしたが、G4からはより薄型で軽量の液晶ディスプレイを使用することで、よりユーザーが扱いやすいものとなりました。その特性を最大限に活かすべく、本体と分離したディスプレイがアームによって接続され、360°縦横無尽に動かすことのできるデザインになったのではないかと推測することができます。
ジョナサン・アイブ氏が初代iMacをデザインする際に、シンプルさと並行して、取っ手をつけるなどのユーザーが「触りたくなる」ような親しみのあるデザインを目指していたことが、iMac G4のデザインからも見て取れることができます。
現在のAppleの製品に引き継がれているような無機質なシンプルさを持ちながらも、どこか触りたくなるような可愛らしさを持ち合わせるそのバランス感覚はこのiMac G4が源流といってもいいのかもしれません。
iMac G5

2004年8月31日に液晶ディスプレイ一体型のiMac G5が発表されました。
このiMac G5のデザインは現在の最新デザインにまで通じるiMacのデザインの基礎を固めた製品となります。
このiMacのキャッチコピーは発売当時、すでに世界中で大ヒットとなっていたiPodを引用し、”From the creators of iPod(iPodの生みの親たちから)”というキャッチコピーが掲げられていました。それを象徴するように、当時の公式キャッチコピーもiMacとiPodが並べられたものが掲載されています。

このiMac G5のデザイン面での特徴は、やはりフラットパネルディスプレイに全てのパーツが格納され、iPodを彷彿させるような洗練されたシンプルかつ、エレガントさと言えます。
ディスプレイサイズは17インチと20インチの2種類がラインナップされており、カラーはホワイトのみとなっていました。ディスプレイのフォルムや雰囲気、プラスチックの素材感などiPodとのデザインの共通項が非常に多く見られたモデルです。
iMac G5 iSight

2005年10月12日に発表された第5世代iMacでは、前世代モデルのデザインを踏襲しながらも、より薄い筐体、画面上部へのiSightカメラの標準搭載を行うアップグレードが行われました。
こちらのモデルがApple、IBM、モトローラが3社合同で開発したプロセッサーであるPowerPCを搭載した最後の機種となり、この後の機種ではIntel製CPUが搭載されることとなります。そのIntel製CPUからApple独自開発のApple Siliconを搭載したMacが発表されるかもしれない、というのもなんだか一時代の終わりのようなものを感じます。。。
iMac Aluminium

2007年8月7日に発表された、初めて素材にアルミニウムを使用したMacの登場です。
今でこそ、Macと言えば削り出しアルミニウムの一体型ボディが特徴的ですが、このMacの発表がそのイメージを決定づける大きな転換点だったのかもしれません。このポリカーボネート樹脂からアルミニウムへの、素材変更によるデザインイメージの転換に影響をもたらしたと考えられるのが、同じ年に発表された初代iPhoneだったのではないでしょうか。
シンプルさや透明感をイメージさせるようなiPodを彷彿させるポリカーボネート樹脂から、より無機質な印象のアルミニウムへの以降によって、「プロのユーザーは新しいデザインが従来のモデルよりもプロ用のコンピュータに似ていると感じ、消費者はさらにハイエンドのコンシューマー向け製品に似ていると感じる」とジョブズ氏は語っています。このような消費者のイメージの変化はAppleはよりエレガントでクリエイティブなブランドだ、という消費者の反応にジョブズ氏が好感触を持ったのか、その後のMacシリーズではこのアルミを使用したデザインがメインになっていきます。
また、Appleのエレガントさという点で、もう一枚。

AppleのiMacとDellのコンシューマー向けPCであるXPSを比較した画像になります。
確かに、DELLをダサい印象を与えさせようという意図を感じずにはいられませんが、一体型のボディ、周辺機器やケーブル類までデザインスキームが合わせられていること等、やはりAppleの製品全体のデザインの優秀さが際立ちます。
iMac Aluminium Unibody

2009年10月20日に発表されたこちらのモデルでは、背面までアルミニウムになったことで、ほぼガラスとアルミニウムだけで筐体が構成されているという、現在のデザインが完成しました。
プラスチックからアルミやガラスへの移行は、デザインの面で消費者に対してポジティブなイメージを与えただけでなく、環境保全という面でもプラスの影響を与えました。このモデルがローンチした2009年頃はテクノロジー企業に対する環境保全への影響が世の中で気にされてきた時期であり、もちろんAppleも例外ではありませんでした。そのような状況から、リサイクルしやすい素材の使用、そしてその素材のイメージを生かしたプロダクトブランディングによって、Appleはデザインに優れた企業というイメージを維持し続けながらも、現在では2030年までにカーボンニュートラルな会社を目指すなど、持続可能性に気を配ったカスタマーフレンドリーな企業であるというイメージを確立させました。
iMac Slim Aluminium Unibody

2013年10月23日に発表されたこのモデルでは、ついに筐体の薄さが5mmという薄型化を実現しました。この薄さの実現は光学ドライブを非搭載にすることで実現されました。プロダクトとしての完成度としては非常に高く、非常に魅力的な製品ではありますが、やはり一部ユーザーからは光学ドライブを外付けにすることへの抵抗感は拭えなかったようです。
また、この薄さの筐体の実現にあたり、製造には航空機のパーツ製造の技術が応用されているようで、ミリ単位のデザインに気を配るAppleらしさが伺えます。

この辺りから、キーボードやマウスがワイヤレス化されたことで、iMacのシンプルさがより際立っっていきます。
iMac 5K Retina Display

2014年10月16日には5,120 x 2,880ピクセルの解像度をもつRatina 5Kディスプレイを搭載した27インチiMacがラインナップに追加されました。
iMac Pro

2017年12月14日には、よりハイレベルなプロの消費者の要求に応えるべく、iMac Proが発表されました。スペースグレーの筐体を持つiMac Proは最高8コアのCPUを搭載し、ワークステーション並みの処理性能を持ち、周辺機器もProオリジナルカラーのスペースグレーで統一されています。
最後に
iMacはどの時代にリリースされたモデルであっても、タイムレスな魅力を持っており、初代iMacやG4、G5の魅力が現在の価値観で失われるわけではありません。スティーブ・ジョブズがAppleはテクノロジーとリベラルアーツの交差点にある会社だ、という言葉がありますが、そこのバランス感覚を持っていることが、PCの競合他社でもあるHP,DELL,Lenovoなどのメーカーに対して私たちが抱くイメージの差に繋がるのかもしれません。
事実、Appleの製品は競合とは異なり、デザイン面ではコモディティー化していません。今までのモデルに共通して言えるのは、親しみやすさとシンプルさではないでしょうか。特にケン・シーガル氏の著書でもある「Think Simple」にあるように、シンプルさの追求というのはAppleという企業の根幹に位置する概念と言えるのかもしれません。
今でこそ、このシンプルさを極限まで追求したAppleのデザインは、デザインの終着点とされているような気がしますが、この次の時代において次のデザインの終着点を定義するのはどのような企業のどのようなプロダクトなのでしょうか。
iPhone 12も発売され、このブログの読者の皆様のような感度の高い方々はすでに手にされている方が多いのかもしれません。そんなiPhone 12のデザインについてもどこかのタイミングで考察していきたいと思います。
では、みなさんのより良い明日を願って!GoodLuck!!!
参考:btrax
iPhone mania
9to5Mac
Photo:Giulia Piccoli Trapletti, DensityDesign Research Lab, MoMA, Mass Made Soul
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