AmazonのPR:世界最大のマーケットプレイスはいかにしてユーザーを作り上げたか?

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本日の記事は、Jill Kentさんによる「Amazon Public Relations: How the World’s Biggest Marketplace Built its Audience」の翻訳記事となります。

Amazonのパブリック・リレーションズ(PR)戦略は「先進的」という同社のイメージを構築するにあたって、非常に重要な存在でした。今までにAmazonが行ってきたPR戦略の中でも特に印象的な活動をいくつか取り上げてご紹介した後、AmazonのPR事例から学ぶだけでなく、Amazonを自社のPRに生かすための方法をご紹介していきます。

オリジナル記事はこちらから⏬
https://prsuperstaruk.medium.com/amazon-public-relations-how-the-worlds-biggest-marketplace-built-its-audience-9abe2dea8cbe


Amazonのパブリック・リレーションズ(PR)に関しては、この巨大なオンライン小売業者は常に少し異端な存在でした。

例えば、2008年には、「Holiday Customer Review Team」と呼ばれる、一般ユーザーによるPRを行いました。

このような先進的な考え方は、同社に大きな利益をもたらしています。1994年にジェフ・ベゾスのガレージで創業して以来、同社は世界最大の小売企業の1つに成長しました。

倉庫見学、ニューヨーク・タイムズ紙を罵倒するPR部長、さらには瓶に小便をする人など、ここ数年のAmazonの最も印象的な広報活動を紹介します。

まず、Amazonはどのようにして先進的な企業としてのイメージを育んでいるのでしょうか。

Changing the game:イノベーターとしてのAmazonのイメージ

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Amazonのアイデンティティには、イノベーションが焼きついています。

1999年当時でさえ、メディアはインターネット上で本が買えることに畏怖と驚きを感じていました(確かに驚くべきコンセプトです!)。

世界最大の小売業者に成長するにつれ、同社は自己満足に陥ってしまったと思うかもしれません。しかし、そうではありません。過去10年間だけでも、Amazonはショッピング体験に革命を起こすことを目的とした数々の新プロジェクトを発表してきました。

最も有名なのは、Amazon Prime Airで、小型のドローンが配送センターから文字通り荷物を飛ばしてくれます。また、地上での自動配送サービス「Amazon Scout」の研究も積極的に進めています。

飛行禁止区域
何年も前から世間に浸透しているにもかかわらず、これらのサービスはまだ実社会で広く採用されるには至っていません。2021年、Amazonはイギリス事業のドローン部門を完全にシャットダウンしました。

その指標からすると、失敗したコンセプトだと思うかもしれません。しかし、それは彼らが存在する理由ではありません。

これらのSF的なサービスが会社にもたらす注目度に注目することが重要なのです。あの50秒間のAmazon Scoutの動画は50万回近く再生され、Amazonのロゴが入った飛行船がドローンを展開する、同じようにクレイジーなクリップは30万回近く再生されました。同様に、レジも人間のオペレーターもいない店舗「Amazon Go」の2016年の予告編は、1,500万回以上の再生回数を記録しています。

Amazonの数々の技術革新は、利益をもたらすためだけのものではありません。PRとまではいかないが、常に未来を見据えている企業であるというメッセージは伝わってくるでしょう。これらのプロジェクトがネット上で高い関心を獲得していることから、そのアイデアが多くの人の共感を呼んでいることがわかります。

PRスタントについて詳しくは、こちらをご覧ください。⏩What are PR Stunts, Anyway?
研究開発プロジェクトを秘密にする企業もあります。それに対してアマゾンは、新しいテクノロジーに挑戦することをオープンにし、公開しています。これによって、アマゾンは革新的であり、常に市場を揺るがす準備ができているという強いイメージを植え付けることができるのです。

あなたのブランドが次に発売する商品は、それほどSFチックではないかもしれませんが、AmazonのPRを参考にすることはできます。新製品や新サービスは、単に新しい収益源というだけではありません。ブランドイメージを強化し、人々の話題になるチャンスでもあるのです。

Taking the pee? 不祥事によるAmazonのPR危機

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Amazonがその労働条件、特に倉庫での仕事について批判にさらされていることは周知の事実です。しかし、2019年には、一部の労働者が忙しさのあまり、休憩を取るどころかペットボトルにおしっこをしなければならないことが明らかになり、事態は不穏な方向へと進んでいくこととなりました。

当然のことながら、Amazonはこの疑惑を否定しています。

呆れるほどの思い上がりで、Amazon Newsの公式Twitterアカウントは、彼らの労働基準を批判した米下院議員Mark Pocan氏に、嫌味なメッセージを送ったのです。「ボトルに小便をかけるなんて、本当に信じているのですか?もし、それが本当なら、誰も私たちのために働かないでしょう。事実、私たちは世界中で100万人以上の素晴らしい従業員を抱えており、彼らは自分たちの仕事に誇りを持ち、初日から素晴らしい賃金と医療を受けることができるのです」。

このツイートは、18.5Kの返信に対して、約4,800の「いいね!」しかもらえませんでした。つまり、典型的な「割りを食った」ケースである。ネットの住人たちは、このツイートの大胆な表現と不安定な主張(搾取的な企業で働く人はいないという考えなど)を使って、Amazonを嘲笑したのです。

事態はそこからさらに悪化していきます。さらに調査を進めると、AmazonはPcan氏に公開謝罪し、ドライバーがボトルの中で排尿することが「可能であり、実際にある」ことを認めざるを得なくなったのです。

これは非常に重要な学びであると言えるでしょう。PRに問題がある場合、そのことについて嘘をつくのは良い選択ではありません。Twitterで保身に走ったり独善的になるのは、さらに悪い結果を招きます。

パブリックリレーションズに公共性を持たせる

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さて、間違った取り組み方を見たところで、同じPR問題に対してAmazonが行っている、より効果的な2つの方法に注目してみましょう。

まず、倉庫見学です。

Amazonの倉庫見学:PRになるのか?

同社の労働環境がAmazonのPRをいかに傷つけているかは、すでに見てきたとおりです。しかし、こうした非難は、熱波で複数の労働者が病院送りになった2011年以来、ずっと続いています。Amazonは、作業を中断する代わりに、救急車の列を倉庫の外に待機させるために雇ったと言われているほどです。

Amazonがこのネガティブなイメージに対抗する主な方法は、一般の人に倉庫を見て回ってもらうことでしょう。

当然ながら、ガイドツアーのポイントは、良い顔をさせることです。Voxのライターが言うように、Amazonのツアーガイドは、会社の良い面をアピールする台本に従っています

「彼らは私たちを[…]安全装置とタイレノール(鎮痛剤)のパッケージが詰まったIDで使用できる自動販売機と、「Amazonians」のキャリアサポート、デイケアアドバイス、メンタルヘルス支援、[…]強力な健康給付、無料のコミュニティカレッジクラスを提供する約10の紙看板の前を案内しました」と述べています。

こうしたツアーは、もちろん一般市民だけを対象にしているわけではありません。

2019年のバーミンガムライブのように、地元の新聞社やメディアにも特別なアクセスが与えられることが多い傾向になります。その結果、Amazonの倉庫は、何百台ものロボットが注文をこなして自動で移動する、物流の技術的革新の事例として紹介されることになります。本質的には、高効率で未来志向の企業であるというAmazon’の広報姿勢を強化するものとなるでしょう。

Amazonの次の顧客にリーチする

ジャーナリスト以外にも、Amazonは学校や子どもをターゲットにして巧みな工夫をしています。

例えば2017年、同社はスコットランドの町ダンファームリンで、近隣の小学校の生徒250人以上にツアーを提供しています。コロナウイルスの大流行時に子供たちに無料の朝食を届けたのと同様に、これは多感な時期の子供たちの心に、Amazonがポジティブな力を持つことを確立させたのです。次世代に良いPRの種を蒔くための賢い方法だったといえるでしょう。

もちろん、パブリック・ツアーには批判もあります。一般公開は、会社での生活がどのようなものであるかを精選し、簡素化したものであると、多くの人が期待しています。『The New Yorker』誌のあるジャーナリストは、一般公開を「ポチョムキン村」に例えました。 Amazonをよく見せるために作られた見せかけの村であり、それ以上のものではないと主張したのです。

しかし、全体としては、AmazonのPRにとって、これは良い影響を及ぼしました。快適で、清潔で、フレンドリーな倉庫を実際に体験した人は、ニュースで読んだ抽象的な話よりもはるかにインパクトがあります。

それと同じように、あなたのブランドも、個人的なレベルで人々に届くようにする必要があります。ツアーでなくとも、ブランドのTwitterアカウントからのメッセージや、自宅のドアに届くギフトパッケージでも、同様の効果があります。

攻めの姿勢で臨む:アグレッシブなPRは正しい行動なのか?

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次に、Amazonがネガティブなイメージに対抗するもう一つの方法、「反撃」を見てみましょう。

PR担当者の多くは、いい人です。私たちは、PRの視聴者(対象の顧客)や他のブランドと良好な人間関係を築きたいと願っています。火に油を注ぐようなレトリックは、通常、それを達成することはできません。そのため、AmazonのPR部門の部長であるJay Carney氏の2015年のMediumの投稿は、とても魅力的です。

Carney氏の投稿は、Amazonが過酷な企業文化を育んでいると非難するニューヨーク・タイムズの酷い記事に対するものでした。特に注目すべきは、「一緒に働いていたほぼすべての人が、自分の机で泣いているのを見た」という引用です。

これは典型的なPRの危機です。あなたのブランドは、世界最大の新聞の一つから名指しで非難されているのです。そのような際、どうしますか?

Carney氏は、信じられないほど攻撃的な投稿で攻勢に出たのです。Amzoanの元従業員数名を名指しで攻撃しました。ニューヨークタイムズの記者の誠実さに直接疑問を投げかけ、本質的に嘘つきで挑発的な人物と呼びました。そして、Amazonの職場文化については、「要求が多い」と言うだけで、ほとんど擁護しなかったのです。

この積極的なPR戦略も、今回に限ったことではありません。米上院議員のBernie Sanders氏が2020年にAmazonが労働者に十分な賃金を払っていないと批判すると、Carney氏は再びサンダース氏へ「代わりに最低賃金を上げろ」と攻勢をかけたのです。

PRの危機管理について詳しくはこちらをご覧ください⏩Crisis Management in Public Relations.

ルールブックを捨てることは 効果的なのか?

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これだと、まるでAmazonがPRのトップを暴走させたように感じるのではないでしょうか。しかし、Wiredの記事が指摘するように、Carney氏の攻撃的なスタイルには利点があります 。たとえば、Carney氏にこれらの記事に直接回答させることで、Amazonの対応に信憑性を持たせることができたのです。ほとんどの企業は、CEO名義でゴーストライターの声明が発表されることがほとんどでしょう。しかし、それは誰もが知っているふわふわしたイメージに過ぎません。それに対して、Amazonは、そんな建前には興味がないことを世間に知らしめたのです。

さらに重要なのは、Carney氏の激しいレトリックは計算づくだったということです。きっと会社のブログでおとなしく反論していれば注目されないものが、彼の攻撃は注目されるのです。ニュースサイトがAmazonのPRを攻撃的だと揶揄するのは、実はPRの宣伝効果を高めているに過ぎなかったのです。

この話の教訓は、時にはルールブックを捨てなければならないということでしょう。

親切でフレンドリーであることはPRの基本ですが、手を汚すことはPRの危機に対する効果的な対応となり得ます。まったく不当なことで非難されている場合、強い態度で臨むことで、世論を有利に導くことができるのです。ただし、「瓶に小便をする(前述)」ような事態に陥らないよう、その自信の正当性は十分に確認するようにしてください。

Amazonを使って自社のPRを強化する

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ここまで、AmazonのPRの仕組み・戦略を見てきました。しかし、AmazonのPR手法を利用して、自社の取り組みを強化するにはどうすればよいのでしょうか?

データ・インテリジェンス企業のMorning Consult社が2020年に行った調査によると、政府、宗教指導者、トム・ハンクスよりもAmazonを信頼しているアメリカ人が多いという結果が出ています。

PRキャンペーンは、他のブランドの権威を利用することがよくあります。そのため、パートナーシップは非常に重要なのです。Amazonは国民から信頼されているため、Amazonのサイトに掲載するブランドにも基本的な信頼があるのです。

パートナーシップについてもっと読む⏩The PR Power of Brand Partnerships.

AmazonがPRパートナーシップに適している理由は、他にもいくつかあります。

  • 人々は購入するためにAmazonにアクセスします。Amazonであなたが受ける印象はすべて、積極的に購入しようとしている人からのものです。
  • コミュニティ・エンゲージメント(レビュー、評価、コメント欄)というスタンバイが組み込まれています。そのため、コミュニティへの働きかけが驚くほど簡単にできます。
  • 非常に迅速かつ、SEO対策に時間やお金を費やす必要はありません。Amazonの検索機能がそのほとんどを担ってくれるのです。

上記を踏まえて…より効果的にAmazonを活用するためにはどうすべきなのか?

最も重要なステップは、魅力的な商品リストを構築することです。Webサイトのランディングページと同様、視聴者が最初に目にするものです。高品質の画像をふんだんに使い、明確で情報量の多いコピーで読者を引き付けましょう。多くの商品が存在するため、多くの人は詳細な説明を読もうとはしません。

また、Amazonのコミュニティ機能を活用することも必要です。

商品ページでできる限り積極的に活動しましょう。これは、レビューに反応することだけを意味するのではありません。多くの商品にはFAQのコーナーがあり、購入前に商品について質問することができます。これらの質問に答えることで、あなたのブランドが高いエンゲージメントを持ち、カスタマーエクスペリエンスを重視していることを示すことができます。

最後に、Amazonと他のPR活動を統合する必要があります。

幸いなことに、Amazonはこれを非常に簡単に実現し、さらにインセンティブを与えてくれます。例えば、2021年のプログラムでは、サイト外からAmazonのリスティングにトラフィックを誘導したブランドに対して直接報酬が与えられました

また、ソーシャルメディアで共有するためのクーポンコードを作成することもできます。これにより、既存のファンは、お得な情報を得ることを期待して、他のプラットフォームであなたをフォローするようになり、ソーシャルメディアであなたを見つけた人々は、あなたのAmazonページに流れ込むようになるのです。

基本的に、これはWin-Winの状況です。

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本日の記事は以上となります。

Amazonがどのようにして先進的な企業というブランドイメージを構築していったのか、またあなたの企業がAmazonを活用することで先進的なイメージの恩恵にあずかるための方法をご紹介していきました。

確かにブランド戦略と言われると、どうしても自社だけでそのイメージを作り上げることを想像しがちではありますが、Amazonをはじめとする世間の広くから信頼され、認められている企業の力を借りることは、自社のブランドイメージにとって相乗効果になるケースもあるかもしれません。(もちろんそこに頼ってばかりもダメですが…(笑)

そんなところで本日の記事は終わりにしたいと思います。
それではまた明日!

Source:https://prsuperstaruk.medium.com/amazon-public-relations-how-the-worlds-biggest-marketplace-built-its-audience-9abe2dea8cbe

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