AppleはPRをどのように活用したのか?【解説記事】

Branding

本日の記事はJill Kentさんによる「How Does Apple Use Public Relations?」の翻訳記事となります。

題名の通り、AppleのPR戦略がいかに優れているかを大きく分けて4つの観点からご紹介していきます。確かにAppleは非常に優れたマーケティングキャンペーンを実施していますが、それは単今回の記事ではAppleのPR戦略の凄さを「第三者に宣伝させる」「希少性を高める」「同じ価値観を共有するファン」「イノベーターの活用」という観点からご紹介します。にAppleに資金力があるから実現できているというわけではなく、どの企業でも実現可能なマーケティング施策を、どの企業よりも効果的に行なっています。(前提として、その広告戦略を裏切らないプロダクトがあることは必須ですが…。)

今回の記事ではAppleのPR戦略の凄さを「第三者に宣伝させる」「希少性を高める」「同じ価値観を共有するファン」「イノベーターの活用」という観点からご紹介します。

オリジナル記事はこちらから⏬
https://prsuperstaruk.medium.com/how-does-apple-use-public-relations-3fa1c10e6a99


アップルはどのようにPRを活用しているのでしょうか。最新のiPhoneやApple Watch、iPadを発表するにしても、アップルは確かに話題作りの方法を知っています。他の企業が注目を集めるために争う一方で、この巨大テクノロジー企業は新製品を発表するたびに、メディアはもちろん、顧客の心をも難なく支配しているのです。その秘密は何でしょうか?彼らのPR戦略はまさに”Genius public relations”だと言えるでしょう。

AppleのPR戦略を徹底解剖

長年にわたり革新的で高品質な製品を生み出し、Apple信者とも言われるようなファンを築いてきたハイテク企業です。

しかし、彼らはまた、革新的なマーケティングとPR戦術の絶対的な達人でもあります。Appleの広報戦略は、一風変わっていると言えるでしょう。しかし、非常に効果的です。ここでは、同社が効果的に使っている4つのPR・マーケティング戦術をご紹介していきます。

AppleのPR戦略#1:秘密主義によって憶測を煽る

多くの企業は、製品の開発段階において、機密保持のために多大な努力を払っています。しかし、アップルのPR戦略はさらに一歩進んでいます。ティーザー広告(※)の達人であるアップルは、可能な限り長くサスペンスを持続させるのです。
(※)断片的な情報だけを公開することで消費者の興味を惹くマーケティング手法

アップル製品が発売される数週間前から、あるいは数ヶ月前から、メディアの話題は耳をつんざくようなレベルまで盛り上がります。アップルは、ほとんど何も情報を提供しないことで、話題をかき立てるのです。例えば、2020年に開催されるiPhone 12の発表イベントは、数ヶ月間秘密にされました。発売日を発表し、招待券を発送したのはイベントのわずか1週間前です。

それだけではありません。Appleはさらに一歩踏み込んで、多くの人が秘密のメッセージと受け取ったものを、発売日の発表の中に隠したのです。メディアやブロガーは、そのメッセージの意味を熱狂的に推測し、それが消費者の驚異的な関心を呼び起こしました。

この「秘密」は、同じくイベントで公開されたHomePod miniのことを指していましたが、この巧妙なマーケティングにより、Appleは何もしなくても大量のPR報道を得ることができたのです。これはまさに名人芸といえるでしょう。

Appleがこのようなことをするのは、今回が初めてではありません。2018年のiPhone Xについても、ほぼ同じ見出しを見つけることができます。つまり、秘密主義は一度だけ使うギミックである必要はないのです。宣伝活動を始める前から人々の関心を呼び起こし、すべての新製品に勢いを与える、実現可能な長期的PR戦略なのです。

Lesson:想像を絶するAppleのPRゲーム

製品を宣伝する最良の方法は、他の人にやってもらうことです。考えてみてください。近所の人の勧めと、派手な広告キャンペーンでの企業の主張とでは、どちらが製品を購入する可能性が高いでしょうか?

Appleのマーケティングを参考にして、ティーザー・キャンペーンを始めてみてはいかがでしょうか。このような、短い、謎めいた発表の積み重ねが、より大規模で本格的なマーケティングキャンペーンにつながり、興味と勢いが増していくのを見ることができるでしょう。

あなたの業界のメディアやブロガーと強い関係を築いていれば、彼らの興味は刺激され、間違いなくあなたのためにバズりを生み出します。
メディアとの良好な関係の築き方については、「メディアとの関係:メディアと良好な関係を築く方法」をご覧ください。

謎めいた表現も臆することはありません。人は謎めいたものが好きです。普通の広告にさりげなくヒントを入れれば、Twitterで話題になること間違いなしです。ファンは、それが何を意味するのかを議論し、新製品への興奮を高めることができます。

唯一の危険は、現実が期待に応えられない場合です。見返りがない限り、何ヶ月も人々を引き留めるのはやめましょう。バッドエンドほど、良い物語を台無しにするものはありません。しかし、それをやり遂げれば、あなたは単なる製品ではなく、経験を売ることになります。

これは、次なるレベルのマーケティングです。うまくやれば、ファンを熱狂させ、キャンペーンをバイラル化させることができるのです。

ApplemのPR戦略#2:希少性を高めて需要を喚起する

ラグジュアリー分野のマーケティング担当者は、現実であれ感覚的なものであれ、常に希少性が製品をより魅力的にすることを知っています。アップルは、製品発表の日に店舗に限られた数の製品を在庫することで、希少性の原理を長い間利用してきました。これは、FOMO(fear of missing out)を利用し、何百人もの人々が何時間も、あるいはこの学生のように何日も行列を作る結果になります。

この行列はマスコミの注目を集め、その結果、アップル社に大量かつ無料の宣伝がもたらされます。
もちろん、希少性は常に幻想であるとは限りません。2020年、コロナウイルスが大流行する中、iPhone 12の発売は、新機種用の電源チップの不足により、大幅に遅れることになりました。このときは、希少性の原理が働いたわけではありません。これは、AppleのPRにとっては不利なものだったかもしれません。しかし、もともとの同社が風変わりなマーケティングをおこなっていたこともあり、多くの消費者は目をつけませんでした。

この遅延は、実は同社にとって有利に働いたのです。iPhone 12のProモデルは、ベースモデルよりもさらに多くの遅延に直面しているが、パーツ供給不足が原因ではありません。Appleの予想をはるかに上回るスピードで売れているからです。

iPhone 12の希少性が人気を呼んでいると言うのは大げさかもしれませんが、それが不利になっているわけでもないのは確かでしょう。
製品を発売する際のヒントについては「Pruduct PR: 製品をフライング・スタートさせる」をご覧ください。

Lesson:AppleにとってPRとはルールを破ること

ビジネスの第一法則は何だろう?もちろん、利益を上げるために製品を売ることです。では、「売らないこと」で利益を出すために、アップルはどのようなPR活動を行ったのでしょうか?

それは、独占性を培うことです。これは、彼らが忠実なコミュニティを構築する方法と関連しています。詳細は後述しますが、要するに、人は手に入らないものを欲しがるということです。

だからこそ、Appleのように、ルールを破り、手に入れさせないようにするのです。
意図的に製品の生産を制限して希少性を出し、製品への需要を喚起するのです。他にも、期間限定や一定数販売されるまでの限定販売など、さまざまな方法が考えられます。また、特定の商品の在庫が残りわずかとなっていることを、ウェブサイトに誇らしげに表示することもできます。買い逃しに対する恐怖感ほど強い感情はありません。

もちろん、実際に品薄になることがないようにする必要があります。それは何より、株主が嫌がるからです。しかし、うまくすれば、独占的な雰囲気は、アップルのように、悪夢のシナリオ(iPhoneの供給不足など)の影響を鈍らせることができるのです。

ApplemのPR戦略#3:ブランド価値を共有するファンを集める

https://prsuperstaruk.medium.com/how-does-apple-use-public-relations-3fa1c10e6a99より

他のハイテクメーカーが自社製品を実用的、マニアック、安価なものとして販売するのに対し、アップルはその逆で、クール、フレンドリー、高級感をアピールしています。アップルは、その革新性、シンプルさ、クールさに共感する熱狂的なフォロワーのコミュニティを集めるブランドカルチャーを作り上げました。そのファンは、アップル製品のファミリーをこよなく愛し、発売日には何時間でも並んででも最新のガジェットを手に入れなければならないのです。

どうすれば、そのようなコミュニティを築くことができるのでしょうか?

その秘訣は、自分が何者であるかを伝えればいいのです。しかし、それと同じくらい効果的なのは、自分が何者でないかを伝えることです。長年にわたるアップルのPR活動の中核は、顧客と他のテクノロジー・ユーザーとの間に「私たちvs他社製品を使う彼ら」の感覚を植えつけることでした。

80年代半ばの有名な「Lemmings」のコマーシャルを考えてみてください。このコマーシャルは、PCユーザーを、文字通り崖から歩いている盲目のビジネスマンとして描いています。(レミング=タビネズミは集団で崖から落ちるとされている)アップルはこのテーマを何年も続けており、「私はMac、私はPC」という広告で、PCユーザーを退屈な頑固者であると描写している。

この広告で、アップルは顧客にエリートで時代の先端を行っていると感じさせることで、同社が製品発表で推進する独占的な感覚とうまく結びつけています。

このアップルのPR戦略は、世界中に何百万人ものファンを持つ彼らにとって、明らかに効果的なものでした。さらに良いことに、このアプローチは、顧客のロイヤリティを高めるのに効果的だということです。アップルのエコシステムは非常に充実しており、多くの顧客がアップル製品を独占的に使用しています。もはや、単なるテクノロジーではなく、その人の一部となっているのです。

Lesson:AppleとPRの関係において、彼らは一線を引くことを恐れない。

ブランド文化を定義するブランドバリューを書き出してみてください。アップルの「Think Different」広告キャンペーンを覚えているでしょうか?冒頭のセリフはこうです。「クレイジーな人たちがいる。反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。四角い穴に丸い杭を打ち込むように、物事をまるで違う目で見る人たち…」

そして、ソーシャルメディア、ブログ、ミーティングなどを通じてデジタルコミュニティを形成し、ブランドのファン同士が簡単につながることができるようにします。
単に製品を売ることに満足してはいけません。ファッションステートメントや、人々がソーシャルメディア上で友人と共有したくなるようなストーリーを販売ることが大切です。消費者にメッセージを広めてもらうことができれば、消費者は潜在的なブランドアンバサダーとなり、その信憑性は従来のマーケティングよりもはるかに大きな力を発揮するのです。
そして、あなたのブランドが支持しないものは何かと問いかけましょう。
例えば、あなたは公害や貧困などの社会問題に立ち向かいたいと考えているかもしれません。あるいは、あなたの業界の大企業に一矢報いたいのかもしれません。ダビデとゴリアテのストーリー(※)は、誰もが好きなものです。
(※)旧約聖書に登場するダビデ王が巨漢のゴリアテに勝ったお話ですね。(かなり省略していますが…笑)

何であれ、ファンには共感できるグループと、距離を置くべき反グループを与えましょう。そうすることで、何年も続く忠実なファンベースを築くことができるのです。

ApplemのPR戦略#4:ブランドを象徴するイノベーターと連携する

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アップル、PR、UK音楽アーティスト、そしてウォレスとグルミットの関係とは?

その答えは、Appleの「Behind the Mac」キャンペーンで、Appleがブランド価値を押し上げるために、特定のコミュニティに向けて自分たちをターゲットにしている好例です。2018年に開始されたこのキャンペーンでは、俳優からミュージシャンまで、有名なクリエイティブな人物が次々と登場し、才能あるアーティストがMacコンピュータを使ってどのように仕事をしているかを示すことを目的としています。

2020年7月、Appleは英国のタレントにフォーカスしたシリーズを発表しました。ウォレスとグルミットの制作者であるアードマン・スタジオなど、イギリスのアイコンが登場する広告では、新しいMacBookの写真の横に「Made in Peckham」などのラベルが誇らしげに表示されていました。

これは、Appleのブランドイメージとイギリスのクリエイティビティを結びつける、シンプルかつ効果的な方法でした。

この広告は、アップルのPR活動の主な目的の一つである、アップルがいかに創造性を刺激しているかを強調すると同時に、この国のクリエイティブな強みを思い起こさせる刺激的なものになっています。

これは、人々の国家的な誇り、創造的であろうとする自然な欲求、そして広告に登場するアーティストの名声を利用するものです。これはWin-Winの関係です。

また、広告に登場するアーティストは各業界で高い評価を受けていますが、女優のミカエラ・コールのような人は、少なくとも現時点では、まだ有名ではありません。他の広告とは異なり、Appleはこのキャンペーンを一般消費者に向けてはいません。

これは、ソーシャルメディアによってコンテンツのマイクロターゲット化が容易になった現代では、特定の業界、グループ、ニッチに向けて自社を売り込む方が効果的な場合もあるということを示しています。クリエイティブ分野は、常にアップルのMacの牙城だったので、このPR戦略はまさに21世紀型のマーケティングと言えるでしょう。

Lesson:優れたPRはコミュニティを大切にする

これが、アップルが自社の価値観を共有するコミュニティを育成している実例です。特にイギリスのニッチを特定し、そこにマーケティングを集中させることで、アップルのPR戦略はターゲットを絞った効果的なものとなっているのです。

どんなビジネスにも、マーケティング対象となるコミュニティがあります。あなたのビジネスの場合はどうでしょうか?

コミュニティとの関わりは、それ自体でひとつのテーマですが、考えてみる価値はあります。今日、効果的なPRとは、すべての人を喜ばせようとするのではなく、適切な人々にターゲットを絞ることです。あなたのビジネスによって影響を受ける人々に焦点を当てた小さなキャンペーンでも、大きな違いを生み出すことができます。

もっと詳しく知りたければこちらの記事をご覧ください。
「コミュニティ・リレーションズとは何か」

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今回のオリジナル記事の筆者であるJillさんは、この記事ではAppleの広告戦略を解説してくれましたが、テクノロジー企業を中心にさまざまな企業についても解説記事を書いています。彼女のようにPRストラテジーに造詣が深い方に話を聞いてみたい方は TwitterLinkedInからもコンタクトしてみてください。

また、こちらのオリジナル記事は PR Superstar websiteからもご覧いただけます。


今回の記事は以上となります。

先日からいくつかフォーカスしている企業のブランディング、PR戦略について、今回はAppleを取り上げましたが、いかがだったでしょうか?

Appleはどちらかといえば、マーケティング手法としては特殊な方法を用いているかと思いますが、批判や敵ができることをある程度覚悟した上で、「Appleユーザーは特別である」という消費者心理を作り出すところが、彼らのPR戦略の肝なのだと感じました。

確かに私も実際iPhoneを使っていますし、この記事もMacbookから書いています。そして、スタバや洒落たカフェでMacを開けば、それだけでおしゃれで特別な気分がしてきます。まさにAppleのマーケティングにまんまと踊らされていますが、だからといって次にPCを買うときに冷静になってDellを買うか?と言われると、それは無いだろうなと思います。笑

AppleのPR戦略は前提として、「期待を裏切らないプロダクト力がある」ということが重要ですが、ブランド価値を共有するコミュニティを活用する点であったり、部分的には多くの企業が真似できる点がありました。きっと多くの起業家がブランド戦略を検討する上で、Appleほどの企業であれば誰しも真似したいと考えると思いますが、それでも同じだけのブランド力を創出することが困難であることからも、Appleがいかにマーケティングにおいても優れた企業であるかを感じます。

というところで今日は終わりにしたいと思います。
それでは、また明日!

Source:https://prsuperstaruk.medium.com/how-does-apple-use-public-relations-3fa1c10e6a99

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