DisneyのPR戦略〜ネズミの家が世界を征服するまで〜【解説記事】

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本日の記事はJill Kentさんによる「Disney PR: How the House of Mouse Took over the World」の翻訳記事となります。
最近このブログでも実際の企業のマーケティング領域、特にPRについての記事をいくつか書いていますが、Jillさんの記事は企業活動の実例がPR戦略としてどのように作用しているのか、非常にわかりやすく解説してくれています。
文章自体も難しい専門用語ばかりではなく、噛み砕いて説明してくれているので、英語初学者の私としても大変読みやすい文章です。

今回は題名の通り、ディズニーにおけるPRについてフォーカスしていきます。
ディズニーが夢と魔法の国といったブランドイメージを構築できた裏には、非常に優れたPR戦略がありました。昨今のブランドイメージをどのように構築してきたのか、そして最近のディズニーにおけるPR活動はどのような戦略なのか、ディズニーの危機におけるPR活動の効果、についてご紹介していきます。

オリジナル記事はこちらからご覧ください⏬
https://prsuperstaruk.medium.com/disney-pr-how-the-house-of-mouse-took-over-the-world-da9666caba5d


2016年、ディズニーは世界で最も強いブランドに選ばれました。2018年には、世界で最も評価されている企業に選ばれました。そして2020年には、17年連続で世界で最も賞賛されるエンターテイメント企業に選ばれました。

これらは印象的な賞賛であると言えるでしょう。Disney のPRチームは、何か正しいことをしているに違いないでしょう。

では、その成功の秘訣は何なのでしょうか?

ディズニーとブランド・ナラティブの力
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Disney は、ロゴマーク以上のものでブランドを確立しています。Disney は、魔法とファンタジーと夢の王国ということを約束し、メッセージの中でそれを強化する機会を決して無駄にはしません。例えば、ディズニーのスローガンには、「夢がかなう場所」「地球で一番幸せな場所」などがあります。

その結果、私たちはDisneyを魔法と結びつけているのです。そして、それを定義するのは難しいのですが、私たちはスクリーン上でそれらの象徴的なキャラクターを見たときにそれを感じるのです。それは、ノスタルジックなおとぎ話のような魅力で、どんなに疲れている人でも子供に戻ったような気持ちにさせてくれるのです。

ここでは、ディズニーの歴史を振り返りながら、このような魔法がどのようにして生み出されたのかを考えてみたいと思います。

DisneyのPRの魔法
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1920年代初頭、創業者のウォルト・ディズニーと弟のレイは、最初のアニメキャラクターの1つである「オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット」の権利が、制作を請け負ったスタジオにあることを発見したのです。

そこでウォルトは、ディズニーの最も象徴的なキャラクターであるミッキーマウスを生み出し、瞬く間にディズニーとともにアニメーションのスーパースターとなったのです。

他の偉大なキャラクターと同様、ミッキーマウスは、特定の映画や場所、商品に縛られることなく、独自の生命を持っています。ミッキーは永遠の存在であり、私たちが魅力を感じるシンプルで不変の、子どものような無邪気さを表現しているのです。
このような考えから、多くのブランドが擬人化されたマスコットを開発しています。例えば、マイクロソフトの「クリッピー」は、悪名高い迷惑なキャラクターでしたが、ディズニーのようにうまくいけば、キャラクターを会社の顔にすることは、あなたのブランドを将来にわたって保護することができるのです。

ストーリーテリング:良いPRの礎になるもの。
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しかし、ディズニーの成功には、象徴的なキャラクター以外にも多くの要素があります。なぜなら、人間は神経学的に物語に反応するようにできているからです。

ディズニーのCEOであるボブ・チャペル氏は、ベストセラー作家のドン・イェーガー氏のポッドキャストで、ストーリーテリングの重要性について次のように語っています。『多くの場合、そのつながりは音楽を通じて行われます。時には、キャラクターを通して。でも、本当にいつもストーリーを通して行われるのです

Disneyが手放したもの
2013年に公開された『アナと雪の女王』は、これらの条件をすべて満たしています。

世界中の大人と子どもが、心に響くストーリー、印象的なキャラクター、そしてあの歌でつながりました。

なぜか?表面的に見れば、『アナと雪の女王』は最も伝統的なディズニー映画の一つです。ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「雪の女王」にインスパイアされ、1人ではなく2人のディズニープリンセス、面白い相棒、そしてハンサムな王子が登場します。これは、ハウス・オブ・マウスの古典的な設計図である。

しかし、この物語は伝統的なプリンセス物語の型を破っている。この物語は、プリンセスが王子様に救われて幸せに暮らすという話ではなく、自己愛と姉妹愛を描いたものなのです。

姉妹の愛
アナとエルサの姉妹は、エルサの魔法の力(手から氷を出すことができる)のために、互いのつながりを維持するのに苦労する物語です。(なんだか難しい言い方ですが…笑)エルサは自分が社会にとって危険であると考え、愛する妹を含め、誰からも孤立してしまいます。
アナはエルサが明らかに拒絶していることに取り乱しますが、映画が進むにつれて、妹がよそよそしかった理由を知ることになります。エルサは誤って妹に魔法をかけ、心を凍らせてしまいます。それを元に戻すことができるのは、「真実の愛」だけだったのです。
この力強いストーリーはディズニーファンの共感を呼び、映画は世界中で大絶賛され、ウォルト・ディズニーのPRチームも大喜びだった。
この事例から得られる教訓はなんでしょうか?最も効果的なブランドメッセージは、ストーリーテリングを用いて、観客の心に長く続くようなポジティブな意味合いを作り出すことです。
もっと詳しく知りたければこちらの記事もご覧ください。
PRストーリーテリングの威力

ウォルトディズニーワールド:魔法のような体験でPRを成功させる
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アニメーション映画もそうですが、ディズニーが世界に展開するテーマパークは、ストーリーテリングを次のレベルへと導きます。私たちの大好きなディズニーの物語は、もはやテレビ画面の中だけのものではありません。トゥモローランドやトイ・ストーリー・ランドなどを実際に探索することができるのです。

当然のことながら、このテーマパークはとんでもない成功を収めている。2019年だけでも、米国にあるディズニーのテーマパークは8000万人以上の来場者を集め、ディズニーランドは世界最大の観光スポットの1つになっています。

ディズニーワールドのPR成功の大きな原動力となっているのが、ユニークなキャラクターとの触れ合いです。

ミッキー、ドナルドダック、グーフィーなど、ディズニーを代表するキャラクターに扮したスタッフは、正式には「キャスト」と呼ばれ、ウォルト・ディズニー・ワールドの開園当初からの名物となっています。

キャストは、そのキャラクターのサインを練習するなど、魔法にかかったような体験ができるよう、さまざまな工夫を凝らしています。その結果、キャラクターとの出会いはディズニーランド最大の魅力のひとつとなり、この心温まるビデオ集はその一例です。

これこそが、まさにディズニーのPRの本質とも言えるでしょう。このような交流によってディズニーランドへの旅が、毎日何千人もの訪問者にとって、ユニークで個性的な忘れられない体験になることを意味します。

なぜスタントがPRにおいてそれほど有益なものになるのか、知りたいですか?詳しくはこちらの記事をご覧ください。
そもそもPRスタントとは?

ディズニーオンアイス

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ディズニー・オン・アイスも同じような考え方ができます。PRは必ずしもスペクタクルなものばかりではありませんが、幼くて感受性豊かな子供が、お気に入りのキャラクターが素晴らしいアクロバティックな技を披露する豪華なライブショーを見ることができれば、それは非常に効果的なことなのです。時に、それは多ければ多いほどいいのです。

つまり、ディズニーランドのPRの成功は、忘れられない思い出を作るために、対面での体験の力を活用することにもあります。

あなたは、施設見学ツアーや感情的なPR演出で、観客をディズニーオンアイスと同じレベルで惹きつけることができるでしょうか?

ディズニーのPR:時代を先取りする
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インターネットは、私たちがメディアを消費する方法を変えました。Netflixのような業界大手は、人々がお気に入りの映画を一箇所でオンデマンドで入手できる利便性のために、映画館での体験をあきらめることを示しました。

彼らがどのようにそれを実現したのか、知りたいですか?
こちらの記事をご覧ください。「NetflixのPR:ストリーミング戦争はどのように勝利したのか?

当然、ディズニーもオンデマンドストリーミングの流行に乗りたかった背景もあり、2019年に「Disney+」(定額制オンデマンドビデオストリーミングサービス)を、開始しました。

サービス開始前、加入者数は100万人を超えていました。数年後、その数は1億人を大きく超えています。

この数字は異常です。しかし、彼らの成功は、ブランドの伝統、カルト的な人気、そして魔法のようなコンテンツの膨大なバックログのおかげだと言えるでしょう。

では、Disney+の立ち上げから私たちは何を学ぶことができるでしょうか?

  • 既存の視聴者を活用し、新商品を強力にスタートさせることが可能。
  • 自社の強みを生かす:過去の宝の山があれば、それを利用するべき。
  • 興味をコンバージョンにつなげるには、独占性とFOMO (Fear of Missing Out )が効果的。
  • ※FOMO…ソーシャルメディア等を通じて、自分だけが取り残されているのではないか?という不安に駆られること

ストリーミング配信へのシフト:ディズニーPR計画の一環

同社のストリーミングへのシフトは、猛烈なスピードで進んでいきました。例えば、2021年公開の「ブラック・ウィドウ」。ディズニーは、従来の映画館での体験からDisney+での同時公開へと強行に移行し、主演女優のスカーレット・ヨハンセンはギャラの損失を理由に訴訟を起こすと脅しました。

COVID-19のパンデミックはこの動きに一役買っていますが、それがすべてではありません。その理由は、Forbesのライター、Dan Runkevicius氏の記事にまとめられています。本質的には、Disney+の収入はそれほど重要ではないのです。むしろ、同社がストリーミングを強く推し進めたのは、「デジタルネイティブ」世代にディズニーブランドを紹介するための巧妙なPR策だったと言えるでしょう。

ディズニーの中心的な戦略は、心をつかむ魅力的なプロットやキャラクターの開発だったことを覚えているでしょうか?このDisney+の公式広告は、まさに「果てしない物語」を物語っています。デジタル世代(ミレニアル世代)にオンラインでブランドを紹介することは、彼らがより収益性の高い他のディズニー活動(毎年ディズニーランドを訪れるなど)に参加する可能性が高くなることを意味します。

しかし、顧客を獲得するために、派手なストリーミング・プラットフォームは必要ありません。月刊ニュースレターや無料プレゼントのような、低リスク、低エンゲージメントの客寄せで視聴者を惹きつけることができるのです。

この教訓としては、 一度、視聴者の注目を集めれば、他の、より価値のあるブランドを売り込むことがはるかに容易になるのです。

ネズミがいるところにお金を置く:ディズニーと企業の社会的責任

おとぎ話のような魅力を持つディズニーですが、やはりビジネスです。そのため、女性スタッフへの低賃金など、非倫理的な手抜きの疑惑がしばしば指摘されます。

そこで、ディズニーはCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に大きな投資を行いました。
慈善事業を通じてブランドイメージを向上させるというものです。
例えば、コロナウイルスのパンデミック時には、3億3310万ドルを慈善事業に寄付しました。ディズニーのボブ・アイガー会長は、300万ドルの給料を全額返上したほどです。

CSR活動の力
これはディズニーUKのPRチームの発案によるもので、ブランドイメージに大きな影響を与えました。

ディズニーはCSRに長けています。毎年、Great Ormond Street病院小児科、Make-A-Wish®UK、Together for Short Livesなどの慈善団体と協力し、重い病気の子どもたちに魔法のような思い出を作っています。

2018年には、Make-A-Wishと協力し、全国のホスピスの子どもたちにディズニーマジックを届けるため、フェイスペインティングやバルーンを使った一連のテーマパーティーに加え、Mr & Mrsインクレディブル、ティンカーベル、ミッキー&ミニーマウスなどのディズニースペシャルゲストを招待しました。

このディズニーのPR活動は、子供たちに優しいディズニーの姿勢を、切実かつ真摯に伝えるものでした。

また、このようなCSRの取り組みは、ディズニーがハピネスを広めるポジティブな企業であるという主張を裏付けるものです。

ディズニーのボランティアプログラム
ディズニーのボランティア活動もまた、彼らのCSRの手腕を示す素晴らしい例です。単に流行りの大義名分だからといって小切手を切るのではなく、ディズニーランドのチケットと引き換えにボランティア活動をするようファンに呼びかけているのです。

これは、PRの天才と言えるでしょう。

  • ディズニーの観客は、受動的な消費者から能動的なブランドアンバサダーへと変貌を遂げます。
  • ボランティアは、ディズニーと結びついたポジティブな実体験を楽しむことができます。
  • 参加者にはディズニーランドへの旅行がプレゼントされ、ブランドへの好感度をさらに上げるための工場となります。
  • ローコストです。ディズニーはディズニーランドやディズニーワールドのチケットの価格をコントロールしているので、「本当に」1円も損することなく、何千枚も配ることができるのです。

このような例は、CSRがPR計画の効果的な、そして重要な一部となり、人々をより広いマーケティングのエコシステムにループバックさせることができることを示しています。そして、世界をより良くすることさえできるかもしれません。

CSRについてもっと詳しく知りたいですか?こちらをご覧ください。「企業の社会的責任(CSR)とは?

(Disneyの物語の終わりのように)めでたしめでたし…?:Disneyの危機への対応

ディズニーは100年ほどの歴史があります。もしあなたが、どんな企業でもそんなに長い間、PRの失敗なしにやっていけると思っているなら、考え直してください。しかし、多くの企業がPR活動の中で失態を犯す中、ディズニーはそれらを正しく行っているのです。

2016年、ディズニーランド・オーランドで小さな男の子がワニに殺されるという悲劇的な事件があったことを考えてみてください。

最近の大ヒット作『アナと雪の女王』の直後に起きたこの事件は、ディズニーにとって悲惨なものでした。実際に訴訟の脅威が漂っていました。ディズニーランドの魔法のような雰囲気が危険にさらされたのです。さらに悪いことに、多くの会社のお偉方は地球の裏側で、待ちに待った上海の新パークオープンを祝っていたのです。

ディズニーはどう対応したのか?ディズニーランドがいかに安全であるかということを大々的に報道するのではなく、控えめで、個人的な反応を示しました。
ディズニーのボス、ボブ・アイガーが少年の家族に電話でお悔やみを述べ、ウォルト・ディズニー・ワールドの社長が上海から飛んできて対応を監督し、ディズニー・パークス公式ブログにはお見舞いの言葉が掲載されています。

迅速な対応

現実的には、この事件の後、数百匹のワニがパーク内から排除されました。

ディズニーは間違いなく悪い(注意書きが足りなかった)のにも関わらず、少年の家族は訴訟を起こさないことを決め、この事件はあっという間に人々の記憶から消えていったのです。

ここから得られる教訓はなんでしょうか?危機的状況に陥ったときは、規則に従って行動するのが最善です。

  • 危機への迅速な対応で話題を先行させました
  • アイガーの電話による個人的な触れ合い
  • ウェブサイトでの明確な声明文の発表
  • 非を認めず、同情を表す

すべての企業がディズニーを見習うべきだと言えるでしょう。

ディズニーのおとぎ話のような魔法を、あなたのブランドでも使ってみませんか?ご興味があれば、筆者のJillさんへ Twitter or LinkedInでコンタクトしてみてください。

また、オリジナル記事はPR Superstar websiteにも掲載されています。


本日の記事は以上となります。

やはり私たちにとってとても馴染みのあるブランドだからこそ、多くの人の心に響くプロモーションを行うディズニーのPRの凄さがあると感じました。ニッチな分野からブランドを構築していく例は多々ありますが、どこかでスケールしようとした時に行き詰まるケースは多いかと思います。その点で、Disney+を活用したデジタル世代への訴求や、CSR活動を通じた”コスパのいい”ブランディング活動は多くの企業にとって、取り入れるべきtyouruyううであると感じます。

記事の中で紹介されていた参考記事も、今後、派生としてご紹介していきたいと思います。
というところで今日は終わりにしたいと思います!
それではまた明日〜!

Source:https://prsuperstaruk.medium.com/disney-pr-how-the-house-of-mouse-took-over-the-world-da9666caba5d

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