メタバースであなたが体験できること。

Market

これまでご紹介してきた記事では、マーケットダイナミクスの観点から見たメタバースの構造、メタバースのバリューチェーンを構成する企業、そしてその未来を形作るメガトレンドについてご紹介してきました。(こちらのブログだと以下の記事などですね)


今回の記事ではJon Radoffさんが書いたThe Experiences of the Metaverseの記事を翻訳し、一部加筆修正を加えた記事となっております。メタバースについて様々な情報が出ていますが、その環境では実際どのような体験ができるのか、ということを具体的に説明していきます。

では、今回の記事もスタートです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

What does the metaverse do? Jobs performed by the metaverse. Venue for activities.
https://medium.com/building-the-metaverse/the-experiences-of-the-metaverse-2126a7899020

 筆者のJonさんは、メタバースの経験にはいくつかの共通した性質があると述べています。

  • アクティビティの重視
  • 没入感が高まり、自己が存在する場所であるということ
  • 指数関数的に増加するクリエーターによって作られていること
  • 没入型の新しいコンテンツをリンクさせ、それらを埋め込むための組織によって支えられていること

メタバースではどんな役割を担っているのか?

その性質上、メタバースで経験できるものは非常に多岐にわたります。
まず、メタバースが受け継ぐ役割を考えてみましょう。

All the Jobs of Television(テレビのすべての仕事)

ビジネス、テクノロジーのアナリストであるベン・トンプソンは、インターネットがすでにテレビを破壊していることを説明するために、製品が行う「Jobs」というメタファーを使っています。テレビは約100年にわたり、情報を提供し、教育を行い、スポーツイベントのライブビューを提供し、物語をリビングルームに持ち込み、退屈しのぎを提供してきました。インターネットはこれらを実現していますが、これはメタバースにおいても継続されることが予想され、クリエイターやその没入感がさらに増加することで、その側面はより強化されると考えられます。

All the Jobs of the Internet(インターネットのすべての仕事)

 インターネットが、もともとテレビがやっていたJob以外にも多くのJobを担っていることは明らかでしょう。物を売ったり、ソフトウェアアプリケーションのプラットフォームを提供したり、マーケットプレイスを実現したり、コラボレーションを促進したりすることができます。
 後述するように、メタバースは、クリエイターのプロセスを簡素化し、より多くの体験を没入型の世界の中に入れ込むことで、これらすべてを強化することができます。

“Third Place” 「第3の場所」

アメリカの社会学者であるRay Oldenburgは家庭や職場を超えた「第3の場所」を、コミュニティの生活、社会的交流、創造性の場として造語しました。
現在、サードプレイスの一部は、ソーシャルネットワークによって代替されています。

物理的なサードプレイスは、活動の場を提供しており、ほとんどのソーシャルネットワークは、コンテンツの共有という1つの主要な活動のみにフォーカスしています。それは、すでにゲームの中で起こていることと言えるでしょう。

ゲームの世界では、友達と一緒に実際の活動を行うことができたり、物語を語ったり、逃避場所を提供したり、さらにはesportsを加えたライブストリーミングという新しい産業も促進されています。

From Transactions to Activities(トランザクションからアクティビティへ)

現在のインターネットは、取引や情報へのアクセスが中心です。
しかし、メタバースでは、ほとんどがアクティビティの話になります。
没入型の学習、ショッピング、教育、旅行、その他の想像を絶するアプリケーションなど、メタバースが拡大していくにつれて、ゲームのように、つまりアクティビティ志向になっていくでしょう。

Properties of the Metaverse(メタバースの特性)

メタバースはまさにインターネット3.0と言い換えることができ、現在のインターネットとは本質的にどのように違うのでしょうか?
オリジナル記事の筆者のJonさんは、メタバースをモノとしてだけでなく、プロセスとしても考えることが有効だと考えており、メタバースはすでに存在していると述べています。メタバースを構築するプロセスは、以下の要素によって推進されるとされます。

  • アクティビティ:ページやアプリを見るだけではなく、その場で他の人と一緒にアクティビティを行うような、没入感のある体験が主流になります。
  • クリエイター主導:独自のアクティビティを作成するためのツールと、ユーザーがアクティビティにコンテンツを追加することができるクリエイター経済の両方の効果により、技術者ではない人々がメタバースを形成することが可能になります。
  • 新興コンテンツの埋め込みとリンク:ハイパーリンクと埋め込みコンテンツが前世代のインターネットの結合組織となったように、没入型インターネットの要素を橋渡ししたり重ねたりする能力が、次の創発的なイノベーションの波をもたらかもしれません。それに伴い、「ハイパーポータル」や「ハイパーストリーム」といった新しい用語が必要になるかもしれません。

What’s Immersive Mean, anyway? 〜そもそもImmersive Meanとは?

辞書的な意味としては、

  1. 人の感覚に積極的に働きかけ、精神状態の変動を生み出す可能性のあるデジタル技術や画像を意味する、または関連するもの
    Ex)没入型メディア、没入型3D環境
  2. 人の注意、時間、エネルギーの大半を占める活動を指す、または関連するもの
    Ex)彼女の長年にわたる没入型の社会学的フィールドワーク
  3. 浸る、吸収する、没頭することを特徴とする、またはそれに関連するもの。

 このように辞書的な意味をまとめてみたものの、このような没入感についての考え方は、少々漠然としているかと思います。
もっと簡単に言えば、自分たちがいる場所を錯覚させてくれるということで、ここでの「自分たち」と言っているのは、その場所に自分が存在しているということに他なりません。

Party in Rec Room that the Game Industry Club had in the Metaverse.

 

当然、ARやVRも含まれますが、それだけではなく、自分が存在できる空間や場所として心が認識するものも含まれます。つまり、2Dでも3Dでもよいのですが、ゲームの中の仮想世界も含まれます。


しかし、それはグラフィックな体験に限ったことではありません。例えば、「クラブハウス」は、すでにメタバースの一部です。

クラブハウスは「インタラクティブ・ポッドキャスト」と表現されることもありますが、それだけではよくわかりません。


クラブハウスは、あたかも部屋の中で大勢の人が学習や社交、水入らずの会話などのアクティビティをしているかのような錯覚に陥ります。そして、その活動パターンは、人々がMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG )でグループを探す方法を反映しています。

メタバースの体験は、人間が進化してきた感覚運動能力を活用することで、場所の感覚を与えています。ビデオゲームはこの点でますます優れてきました。そして今、その学習の一部と、コンテンツを私たちの周りに配置するための空間コンピューティング技術が、ゲームやエンターテインメントの可能性を広げるだけでなく、他の多くの仕事にも影響を与えることになるでしょう。

Use Cases for the Metaverse  〜メタバースのユースケース〜

メタバースが担う役割から、具体的な例をご紹介していきます。

ゲーム

私たちはすでにゲームを持っており、それはすでにメタバースの一部となっていることは認識済みですが、それらはますます没入型になり(場所の感覚に適応し、よりソーシャルで、よりインタラクティブに)、指数関数的に増加するクリエイターによって作られるようになるでしょう。
UnityやRobloxは、何百万人ものクリエイターがゲームを提供できるようにすることで、ゲーム制作に変革をもたらしたプラットフォームの2つの例といえます。

Making a game in Roblox.

Making a Game in Unity

ソーシャルエクスペリエンス

ゲームの中の仮想世界を実現する技術の多くを利用して、メタバースは、写真やニュースのリンクを共有するだけの関係性ではなく、活動を通してのつながりを実現します。

Enjoying a social gathering in Rec Room.

没入型のコマース

これまでのEコマースの最大の成功例は、ロータッチで自分の意思で購入するというものでした。
伝統的な小売業は、お茶を注いでくれたり、購入について相談に乗ってくれたりするようなハイタッチが消費者に喜ばれる場面ではまだ優れています。メタバースにおけるイマーシブ・コマースはこれからが本番なのかもしれません。
事実、Shopifyは同じような考えから、下記のサービスをローンチしました。(こちらのビデオでは、ShopifyがVRを使用してどのように小売と消費者をコラボレーションさせていこうとしているのか、描かれています。)

コラボレーション

私たちはすでに、Zoom、Slack、Discordなどのツールを使ってコラボレーションを行っています。しかし将来的には、より高い没入感によって、既存のテクノロジーではまだ困難な方法で同僚が参加できるようになるでしょう。

Gather.townは、Beamableで毎週開催しているソーシャルアワーのためのバーチャルコラボレーションスペースです。
Collaboration in Spatial.

不動産

VRだけで住宅を購入するようになるのはまだ先のことだと思いますが、興味のある物件を事前にチェックしたり、物件の拡張情報を再確認したりする重要な手段となるでしょう。
メタバースが不動産業界を吸収していく中で、この体験はよりソーシャルでインタラクティブなものになっていくと思われます。

Virtual Real Estate tour from Matterport.

旅行

最もコストがかかり、エコにも負担がかかる産業のひとつが旅行です。
メタバースを使えば、いつの日か世界で最も行ってみたい場所を訪れることができるようになるかもしれません。Matterport社はすでに、エジプトの5つの遺産をVRで訪問することを可能にしました。

Tomb of Queen Merasankh III. ←こちらのリンクからお試し可能です!

現在、メタバースでの旅行のほとんどは、事前に作られた静的な「シングルプレイヤー」の体験です。しかし、それがマルチプレイヤーになり、テレプレゼンスを介して友人と一緒に実際にその場にいるようになったら、よりエキサイティングな体験が可能になるのではないでしょうか?

建築、エンジニアリング、デザイン

コラボレーションといえば、NVIDIAのOmniverseは、建築家、エンジニア、デザイナーが共同で空間をデザインするための相互運用可能なコラボレーションスペースを作っています。

流体力学のAIモデルを既存環境に組み込むこともできますし、現実世界の物理学のライブラリも増えています。

Fluid Dynamics in Omniverse.

自動車産業

自動車は長い間、ビデオゲームの魅力的なコンテンツの一つでしたが、それはもちろんメタバースでも変わりません。メタバースは、自動車業界にも膨大な数の新しいユースケースをもたらします。

Image from Hyundai.

建築と同じように、メタバースは自動車を設計するための協力的で社会的な空間を提供します。また、自動車、特に自律走行をテストするためのシミュレーション環境も提供されるでしょう。そして、いつの日か、家族と一緒にバーチャルショールームを訪れ、どの車を買うかを決める日が来るかもしれません。

教育と学習

パンデミックの間、ZoomやGoogle Classroomなどのオンライン教育へ代替しようと各教育機関が奮闘しましたが、まだ現段階では私たちのテクノロジーの選択肢は限られていました。しかし、メタバースが教育をより没入感があり、よりソーシャルなものへ変えるかもしれません。

これにより、優れた教育者がどこにいても指導できるようになり、彼らが創造性を発揮するためのツールが提供できるようになります。また、メタバースの技術がゲームから得た知見を活用し、より楽しく、興味深い体験ができるようになります。

これは従来の教育、企業研修、スキルベースの学習(例えばARを使って食器洗い機の修理方法を教わる)など、あらゆる分野に影響を与えることになるでしょう。

フィットネス

もう2度とジムに行くことがなくなるかもしれません。パンデミックの以前は筆者のJonさんはPelotonを定期的に利用していたようですが、パンデミックの間はパーソナルトレーナーにFacetime上で会うようになったようです。

Josh Johnson, my personal trainer. ←この方がJonさんのトレーナーですw

Oculusで提供されている、大自然の中でフィットネスを楽しめるアプリの「Supernatural VR」は、よりインタラクティブでよりソーシャルなものにすることで、フィットネスをメタバースの世界にもたらしました。

ボリュームのあるライブストリーミング

ライブストリーミングは現在、一対多の体験です。ゲームを見せたり、教えたりするのに適しています。それはすでにソーシャルな体験となっていますが、それと同時にメタバースの一部となっているともいえます。

しかし、その傾向は今よりももっと成長します。ライブストリーミングがボリューミーになれば、今よりももっと没入感が増し、もっとソーシャルになるでしょう。

Eスポーツ

ビデオゲームをスポーツ観戦として楽しむ観客は、どんどん増え続けています。このようなイベントの興奮を味わったことがない方は、ぜひこのビデオを見てみてください。

その興奮や社会構造造、コミュニティをさらにメタバースに持ち込んだときのことを想像してみてください。
コンサートは、そのヒントになるかもしれません。

ライブミュージック

今は、ミュージックビデオを見たり、CDやApple Music、Spotifyなどで音楽を聴いたりすることは多いはずです。
もちろん、それは今後も続くでしょうが、メタバースでは、これまでにない音楽体験を提供することができます。「Fortnite」や「Roblox」は、何千万人ものファンを魅了したライブコンサートですでに記録を更新していますが、この流れの序章に過ぎません。

メタバースでは、インタラクティブ性、コミュニティ、拡張現実による体験など、まったく新しい領域が広がっています。これらの体験の中には、単に対面式のコンサートに代わるものではなく、それ以上のものもあるでしょう。そして、メタバースは未知数の未来であり、最前列の席は希少価値のあるものから、誰もが体験できるものになるでしょう。


没入型シアターと物理的世界の交わりがより深くなる

ここまで書いてきたことのほとんどは、完全にデジタルな空間への進出ですが、メタバースには、物理的に移動する空間での活動も含まれます。

ここまで書いてきたことのほとんどは、完全にデジタルな空間への進出ですが、メタバースには、物理的に移動する空間での活動も含まれます。
Internet of Everythingは、データ、地理的要因で収集されたコンンテンツ、デジタルツインをメタバースへフィードバックし、現実世界を新たな方法で理解、操作、シミュレートすることで、時間を節約し、生活やビジネスに新たな可能性をもたらすことができます。このような情報を遍在させることで、産業、旅行、軍事、市民、住宅への応用は無限に広がります。

物理的な脱出部屋からのゲーム、劇場、コンサート、ライブなど、物理的なものと仮想的なものを混ぜ合わせ、特殊効果や新しいキャラクター、より個人にフォーカスした情報により増強した体験もあります。

Augmented Reality enhancing a theater experience.

まとめ

メタバースは、次世代のインターネットです。

友人や同僚と一緒に楽しめるアクティビティを中心に構築されています。
飛躍的に増加したクリエイターは、新しい時代のクリエイター向けツールを活用して、ミックス&マッチング、埋め込み、リンクを行っています。

その仕組みによって、メタバースはあなたが想像もしなかった場所に連れて行ってくれます。
そして、それは非常に素晴らしいことです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回の記事はここまでとなります。
また、Jonさんの元記事ではメタバースに関する記事のまとめのデックが掲載されています。そちらも情報がまとまっており、メタバースの情報まとめとして非常に役に立つと思いますので、ぜひご確認ください!

Source:https://medium.com/building-the-metaverse/the-experiences-of-the-metaverse-2126a7899020

コメント

タイトルとURLをコピーしました