本日の記事はJill Kentさんによる、「How to Make PR Work for Your Luxury Brand」の翻訳記事となります。
この記事は、先日のNikeのPRの回で引用させていただいたJillさんの記事パート2となります。どんな企業にとってもブランド認知やロイヤリティの醸成といったPR活動は欠かせません。そして、ラグジュアリー業界においては、顧客は機能性や価格で買うかどうかを判断しません。「その人にとって高いお金を出してでも買いたいブランドなのか」と言う点が重要です。ブランドに対して顧客がそのように感じることができるかどうか、それはPR活動に懸かっていると言っても過言ではありません。
ラグジュアリー業界においてのPR活動の重要性とともに、どのような手段を使えばそのロイヤリティを向上できるのかについてご紹介していきます。
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https://prsuperstaruk.medium.com/how-to-make-pr-work-for-your-luxury-brand-d68e94f03353
旅行、宝飾品、化粧品、ホテル、ファッションなど、どのような高級品やサービスを提供する場合でも、ラグジュアリー業界は非常に競争が激しくなっています。
ラグジュアリー産業は、経済的にも繁栄しています。しかし、多くの高級ブランドが注目を集めるために競い合っている中で、どのようにして自社のブランドを前面に押し出し、中心的な存在にすることができるでしょうか?
ラグジュアリーブランドには、PRが欠かせません。特に、雑誌やテレビを見なくなったミレニアル世代には、従来のマーケティング手法はもはや有効ではありません。このような層は見識も高く、本物のストーリーテリングで本物の体験を提供することをラグジュアリーブランドに求めているのです。
ラグジュアリーブランドにおけるPRの力
一般的に、高級品を購入する顧客は集めるのが難しく、維持するのはさらに難しいと言えます。そのため、ラグジュアリーブランドのPRは、生涯を通じてブランドに高いロイヤリティを持ち続けるようなラグジュアリー好きの顧客を惹きつける鍵となります。
では、ブランドはクリエイティブなPR戦略の一環として、どのようなテクニックを用いるべきなのでしょうか?ストーリーテリング、セレブの推薦、ソーシャルメディアを通じたコミュニティの構築、インフルエンサーマーケティング、そして限定品のオファー。
では、それぞれの分野を順番に見ていきましょう。
ブランドのストーリーを語る

どんなブランドにも過去があり、会社の始まりや関わった人々についての興味深いストーリーがあります。特にラグジュアリーの分野では、ブランドは本物で、透明性があり、より人間みのある方法で顧客とつながる必要があるため、これは特に重要です。実際、ミレニアル世代の買い手はそれを求めています。
最も成功しているラグジュアリーブランドは、心に響く詳細なストーリーを語ることに長けているブランドです。製品がどのように作られ、どのような配慮がなされているかというストーリーは、常に人々の関心を集めています。また、素材の品質や希少性、その産地などの全てが良いPRストーリーとなるのです。また、メディアリレーションの観点からも、新しいラグジュアリー製品やサービスについてジャーナリストに直接売り込むよりも、クリエイティブなプロセスや使用された素材を紹介するラグジュアリープロダクトのPRの方が、メディアに取り上げてもらえる可能性が高くなります。
目の肥えた高級品の顧客は、ブランドを支えるクリエイティブな才能や、同じような倫理観を共有しているかどうかについても知りたがっています。特に、世界有数のファッションブランドのデザイナーには、このような傾向があります。洋服やバッグが美しいだけでは十分ではありません。どのように作られ、誰によって作られたかということも、ラグジュアリー製品を購入するお客様にとっては重要なことなのです。
BurberryとChanel
強力なブランドストーリーテリングの教科書となるのが、Burberryです。1856年、21歳のトーマス・バーバリーによって設立されたこのブランドは、19世紀後半にその名を轟かせ、英国軍の定番となる高品質のアウターウェアの生産を開始しました。第一次世界大戦中、Burberryのトレンチコートは陸軍の全将校に支給されていました。Burberryのストーリーは、ブランドにカリスマ性と評判の高い品質を与えています。
では、 Chanelのブランドストーリーはどうでしょう。ガブリエル・”ココ”・シャネルは、典型的な立身出世のストーリーです。孤児院に捨てられた彼女は、21歳の若さで最初の店を開くまでに成長し、ジャージー素材のドレープや、どこにでもあるシャネルスーツでファッション界を永遠に変えてしまったのです。1971年に創業者が亡くなったにもかかわらず、彼女の名前は今でもブランドのストーリーの一部として使われ、しばしば引用されています。
“ラグジュアリーは快適でなければならない、そうでなければラグジュアリーではない。”
第三者の評価を活用する

1760年代、陶磁器で有名なジョサイア・ウェッジウッドは、王室の推薦を自社製品のPRに利用したのが世界最古のエンドースメントと言われています。
一方、時計メーカーのOmegaは、NASAの厳しいテストに合格した唯一の腕時計であり、「すべての有人宇宙ミッションに対応するクオリティ」であるという事実を宣伝することができます。このお墨付きがあるとどうでしょうか?Omegaの競合他社の多くは、その評判とプレミアム品質という同じような価値を主張することができますが、これほどハイレベルな差別化を主張できる企業はありません。
セレブリティの起用は、長年にわたって高級ブランドにとって自然な流れであった。ケイト・ウィンスレット、ニコール・キッドマン、シャーリーズ・セロン、ナタリー・ポートマンといったオスカー女優たちは皆、高級ブランドと長い付き合いをしてきました。ウィンスレットは時計メーカーのLonginesと、キッドマンはChanelと、セロンとポートマンはDiorと。
一部の高級ブランドは、ミレニアル世代を取り込むために、あまり目立たないセレブリティをブランドアンバサダーとして起用しています。彼らは、今はまだ高級品を買うお金を持っていなくても、将来のある時点でそのブランドを購入することを熱望するように仕向けているのです。しかし、このようなセレブリティにとって、スタジオに現れ、商品と一緒に写真を撮られることは問題ではありません。最近のセレブリティのエンドースメント(推薦)は、推薦というよりも、価値ある活動への貢献も契約の一部とした、完全なコラボレーションなのです。今日のセレブは、クリエイティブなプロセスの一部なのです。そして、それが良いPRストーリーとなるのです。
セレブリティの推薦を正しく受け入れているラグジュアリーブランドとは?
歌手、プロデューサー、作家、起業家、ファッションデザイナーなど、オールラウンドな才能を持つPharrell Williamsは、Chanelの数少ない男性アンバサダーとして活動しています。故カール・ラガーフェルドとのコラボレーションによる人気のトレーナーや、コレクション性の高いガブリエル・シャネルのハンドバッグの広告に出演し、同ブランド初のユニセックスカプセルコレクションも手掛けています。
スーパースターのビヨンセは、音楽フェスティバル「Coachella」に出演する際の衣装を、高級ブランド「バルマン」のデザイナー、オリヴィエ・ルスタン氏と共同で制作しました。また、Balmain x Beyoncéコレクションを制作し、その収益はすべてUnited Negro College Fundに寄付されました。
もう一人の大スター、リアーナは、ラグジュアリ業界最大手のLVMHと共同でオリジナルブランドを立ち上げた最初の女性です。その結果、LVMHはミレニアル世代の市場とのエンゲージメントを大幅に高めることに成功したのです。
ソーシャルメディアを通じてコミュニティを構築する

ラグジュアリーブランドの体験の多くが、店舗で受ける静かで丁寧な接客に基づいている場合、24時間365日体制のソーシャルメディアを使ってフォロワーを増やすことは、直感にみれば反するように思われます。しかし、ソーシャルは高級ブランドのPR戦略にとって不可欠な要素であり、ブランドがソーシャルの力、特にInstagramのようなプラットフォームを取り入れることが不可欠なのです。ソーシャルメディアは、ラグジュアリーブランドに認知度を高め、ビジネスを「魅力的なブランド」として位置づける機会を与えてくれます。
ブランドはどのようなコンテンツを作成し、共有すべきでしょうか?いくつかのコンテンツは、販売ページに直接リンクしている製品の美しい画像も含んでいます。しかし、オンラインオーディエンスに興味を持ってもらうためには、コンテンツに変化を持たせることが重要です。ムードボード、カラーチャート、スケッチ、アイデアなどの画像は、フォロワーにとって常に興味深いものです。
Instagramのストーリーもそうです。クリエイティブなプロセスの映像や、デイナーへのインタビューなどをシェアしましょう。ファッションショーのライブ映像、ファッション撮影のバックステージ、発売前のコレクションの「ファーストルック」などは、常に「いいね!」を集めることができます。
BalmainとFendi
もちろん、InstagramやTwitterなどのプラットフォームでは、ラグジュアリーブランドが独自のハッシュタグを使用してエンゲージメントを促進する機会があります。バルマンは、さまざまなコレクションに関連するコンテンツに「#BalmainArmy」というハッシュタグを使用しています。一方、高級ファッションブランドのフェンディは、製品に対しては#FendiBaguette、#FendiCoutureなど、また個々のコレクションにあh#FendiPrintsOnなどのハッシュタグを使用しています。
ChanelとValentino
では、どのようなラグジュアリーブランドがソーシャル上でのコミュニティ構築に成功しているのでしょうか。シャネルは今でもトップに君臨しており、最も影響力のあるラグジュアリーブランドと言われています。一方、ヴァレンティノのような小規模ブランドは、プロの写真とユーザー生成コンテンツを組み合わせることで、ソーシャルメディア上で最も効果的な高級ブランドの一つとなっています。また、彼らは顧客と直接関わり、オンラインで質問に答えることに喜びを感じています。このような透明性と信頼性の高さによって、ロイヤリティの高いファンを確保しているのです。
インフルエンサーとの協業

PR戦略の一環としてソーシャルメディアのインフルエンサーと連携することで、高級ブランドは従来のメディアリレーションズの経路よりもはるかに大きなリーチを得ることができます。だからこそ、ラグジュアリーブランドはそれを受け入れているのです。
インフルエンサーとのエンゲージメントを成功させる鍵は、直感や他のラグジュアリーブランドが協力しているからといってではなく、適切なアナリティクスとデータに基づいて適切なインフルエンサーを見分けることです。ブランドは、膨れ上がったユーザーベースやエンゲージメント率を提供するインフルエンサーに警戒する必要があります。
高級ジュエラーのティファニーは、キャンペーンの一環として、旅行インフルエンサーのジャック・モリス(@doyoutravel)、女優のヤラ・シャヒディ(@yarashidi)、モデルのケンダル・ジェンナー(@kendalljenner)ら多くのインフルエンサーと提携しました。これらの若く最先端のインフルエンサーと協力することで、200年の歴史を持つジュエリーブランドは、ミレニアル世代やZ世代にその存在を知らしめたのです。言い換え流ならば彼らは未来の顧客です。
ファッションブロガー
Dior、Chanel、Gucciなどのファッションブランドは、世界各地のファッション・ウィークにブロガーやソーシャルメディア・スターを招待し、舞台裏に立ち入らせるということまでしています。その結果、質の高いコンテンツがフォロワーに独占的に共有されるようになりました。Gucciは、有名なブロガーでありグッチファンのジェフリー・スターを招き、ピンクのカスタムラゲージコレクションを共同制作しました。コラボレーションの過程と完成品の写真や動画は、ジェフリーのソーシャルメディアで共有され、Gucciは多くのメディアに取り上げられ、売上も増加しました。
Instagramのトラベルインフルエンサー
ヒルトンホテルもフォロワーや顧客数を増やすために、インフルエンサーと提携しています。東京の築地魚市場、香港のテンプルストリート・ナイトマーケット、ロンドンのカムデン・マーケットを含む「世界の都市七不思議」を特定したヒルトンは、このリストとヒルトンホテルを宣伝するために、複数のインスタグラムの旅行インフルエンサーと協力しました。その中には、ジャック・モリス @doyoutravel (再び登場ですね) ツン・シン・チャン @tschang とジュネル・コルネホ @shackette が含まれています。各投稿では@hiltonhotelsをチェックし、#SevenUrbanWondersと#RightHereのハッシュタグを使用しました。旅行写真家のJunell Cornejoは、UAEの建築、店舗、環境を撮影した素晴らしいビデオを撮影し、18,574件の「いいね」と341件のコメントが寄せられました。20.79%という素晴らしいエンゲージメント率です。
エクスクルーシブの形成

他の人が簡単に手に入れることができないものを持つことは、ラグジュアリーの典型です。ラグジュアリーブランドは、長い間、顧客が苦労して稼いだお金を出させるために、ある種の魅力や神話に頼ってきました。BoseやBang & Olufsenなどのハイテクブランドから、ロールスロイスやジャガーなどの自動車メーカーに至るまで、一流ブランドのマーケティング方法には一貫して「独占性」というテーマがあります。実際、高級車メーカーのロールスロイスは年間2,000台しか製造せず、1台1台が手作業で仕上げられています。
これらのブランドを購入することで、消費者は彼らの高級化された世界の一部になることができます。彼らは、すべての人が所属できないエクスクルーシブなグループに属していると感じているのです。
では、高級ブランドを排他的な存在にするにはどうしたらよいのでしょうか。様々な方法でエクスクルーシブ的な感覚を構築することができます。まず、お客さまが商品を購入するのを簡単にしすぎないことです。手に入りにくいものであればあるほど、顧客はその製品を所有したいと思うものです。また、他の人がほとんど持っていない商品であれば、より一層欲しくなるものです。
Hermes
Hermesのケリーやバーキンのバッグは、多くの女性にとって手に入れたいものです。エルメスのバッグは、見た目が美しく、投資に適しているだけでなく(エルメスのバッグを買うことは、株式市場で遊ぶよりも良いとも言われます)、信じられないほど入手が困難なのです。エルメスは、欲しい人すべてが手に入れられるように、生産量を増やすことができるだろうか?おそらくそれは可能でしょう。しかし、そうしないのには理由があります。彼らはエルメスのバッグをエクスクルーシブな存在にしておきたいのです。そして、その独占性のおかげで毎年価値が上がる製品への高い需要は、素晴らしいPRストーリーとなるのです。
また、最も大切な顧客をVIP向けの特別なイベントに招待したり、新製品を期間限定で消費者に提供したり、製品を一部の小売店だけに卸したりすることもできます。
このような場合、経験豊富なラグジュアリー・ジャーナリストが、伝統とラグジュアリーの価値観に敬意を払いながら、製品の良さを最大限に引き出し、その価値観を利用してブランドが高いレベルの独占性を生み出すお手伝いをし、真の価値を付加することができるのです。
オリジナル記事の筆者のJIllさんが所属するPR Superstarは、ラグジュアリー分野の数多くのブランドと協力し、革新的で結果を出すラグジュアリーPRキャンペーンを展開しています。あなたのラグジュアリーブランドにPRがどのように作用するのか、ご覧ください。
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本日の記事は以上となります。
ラグジュアリー産業においてのPRの必要性、そして高いロイヤリティを構築するための施策をご理解いただけたかと思います。このようなPR活動を行うためには、前提としてその土台とする良いプロダクト・サービスが必要となります。
昨今の大企業がいかにして消費者に受け入れられる製品・サービスを作り上げたのか、という点についてはまた次の機会に執筆したいと思います。
こんなところで本日の記事は終わりにしたいと思います。
それではまた明日!
Source : https://prsuperstaruk.medium.com/how-to-make-pr-work-for-your-luxury-brand-d68e94f03353
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