【翻訳記事】マーケットプレイスの未来《前編》

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 Amazon、Uber、Airbnb、eBay…さまざまなマーケットプレイスが私たちの生活には欠かせないものとなっています。それらのマーケットプレイスはなぜここまで事業を拡大することができたのでしょうか?また、これからのマーケットプレイスが私たち消費者に受け入れられ、必要とされるためにはどのような資質を持ち合わせる必要があるのでしょうか?
 そのようなマーケットプレイスの展望について解説している記事の翻訳になります。前編・後編の2つに分けてご紹介していきます。

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The future of marketplaces: coordination, capital, and creativity
〜マーケットプレイスの未来:バランス、資本、創造性〜

 AirbnbとDoordashは同じ週に株式を公開し、総額1,000億ドル以上の評価額にまで暴落しました。両者に共通しているのはこれだけではありません。どちらもそれ以前に公開されたマーケットプレイスよりも高い手数料を請求し、その手数料を正当化するために多くの労力を割いています。これはパブリックマーケットプレイスの長期的な傾向です。

https://www.danhock.com/posts/the-future-of-marketplacesより

 これはそれぞれの業界でも同じで、最も成功している新しいマーケットプレイスの多くが、より高い手数料とより高い影響力のあるモデルを使って、古いマーケットプレイスと競争しています。フードデリバリー大手のDoordashはこれを同じ業界の大手のGrubhubに、不動産テック企業のOpendoorは同じ業界のZillowに、レアスニーカー取引プラットフォームのStockXはオークションサイトのEbayに対して行いました。

 しかし、100%の手数料を持つビジネスを表す言葉があり、それは…マーケットプレイスではありません。つまり、マーケットプレイスは、業界が多くの独立したサプライヤーから統合されたスーパーサプライヤーへと移行していく中で、単なる中間的なステップに過ぎないということでしょうか?

https://www.danhock.com/posts/the-future-of-marketplacesより

 いくつかの業界はすでにこの方向にシフトし始めています。多くの人はOpendoorをマーケットプレイスと呼んでいますが、このプラットフォームは単に買い手と売り手を結びつけるのではなく、実際に在庫を売買しているのです。これはマーケットプレイスではなく、非常に高い価格帯のEコマースです。
 さらに多くの産業が業界が変化する過程でこのルートを通ることになることが予想されますが、それ以外の産業は抵抗し、マーケットプレイスモードで均衡を保つことになるでしょう。

 この違いをどうやって見分けることができるのでしょうか?その答えを出すためには、そもそもなぜマーケットプレイスがマーケットプレイスでなければならないのかを解明することが有効です。サプライヤー自体が行うことは、マーケットプレイスが自分たちで行うには複雑すぎたり、資本が集中しすぎたりするようなケースが考えられます。

 これらは3つのカテゴリーに分類されます。

 コーディネーションとは、取引を特定して成立させるための作業のことです。これには、製品やサービスのカテゴライズ、スコープ、価格設定を読みやすくすること、サプライヤーと顧客のマッチング、信頼性の確立などが含まれます。現在の多くのマーケットプレイスは、製品やサービスのカテゴライズ、スコープ、読みやすい価格設定といった、これらの作業をすべて行っていません。例えば、ホームアドバイザーのようなローカルサービスのマーケットプレイスは、買い手と売り手をマッチングしますが、実際に仕事の範囲と価格設定は彼らに任せています。

 資本とは、ビジネスを行うための全てのコストとリスクのことを指します。ほとんどのマーケットプレイスは、それをすべて負担することはできません、またはより正確には、彼らはそれをすべて負担することはできず、それでもベンチャーのようなスピード感とと規模で運営しています。新しい市場を立ち上げるたびに、何百ものレストランを購入したり、立ち上げたりしなければならないとしたら、拡大するにはDoordashにはあまりにも長い時間が必要だったでしょう。

 創造性とは、そもそも何を売るべきかを見極めることであり、多くの場合、これまでに販売されたことのないものを作ることになります。これには、手芸などの売買プラットフォームであるEtsyで見かける創造的な表現の多様性も含まれている。

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How marketplaces have progressed over the last 25 years
〜過去25年でマーケットプレイスはどのように進化してきたのか〜

 マーケットプレイスは、以下のアクティビティを経ることで進化を続けてきました。こちらのページでは、Casey WintersとGilad Horevが、いくつかの大まかなカテゴリで企業活動を行うためのレイアウトを行っています。

 1.ライトマーケットプレイスとは、ZillowやHomeAdvisorのようなマーケットプレイスの「1.0」企業のことです。これらの企業は、マーケットプレイスとして必要最低限であるマーケットプレイスのへの理解と顧客獲得を行っています。購入者(顧客)は取引をしていくために、そのマーケットプレイスで何が販売されているのかを理解しなければならず、もしマーケットプレイスがサプライヤーの需要を集約していなければ、それは実際にはSaaSと同じです。多くの業界では、この2つを行うだけで10%程度の手数料が得ることが基準となっています。

 2.マネージドマーケットプレイスとは、AirbnbやEtsyのような、さらに一歩進んで、通常の企業活動であれば最も困難な信頼の確立を含むすべての問題を調整し、解決します。これには供給を吟味し、強力なレビューとフィードバックの仕組みを作り、プラットフォーム上で取引を行うことが含まれます。これを行うことで、手数料を最大20%まで増やすことができます。

 3.ヘビーマネージドマーケットプレイスは、プラットフォーマーのコスト構造における主要な構成要素を引き受けるようになります。これには、物流の所有(例:Instacart)や取引の引受、ネット決済条件の提供(例:Faire)などが含まれます。手数料は、マーケットプレイスが引き受ける構成要素によって大きく異なりますが、今日では30~35%と高い水準になっています。

 4.垂直統合された企業は、取引におけるすべての構成要素を引き受け、そのサービスの経済性を100%維持する。例えば、ClutterやHonorは、サービスプロバイダーの直接雇用や提携を行うことで、提供するサービスや価格を標準化し、サービスの提供をエンドツーエンドで管理しています。これらをマーケットプレイスと呼ぶこともできますが、実際のところ、これらはただの大手のテック対応サービスプロバイダに過ぎません。このため、この記事ではこのグループをsuper-suppliersと呼ぶことにします。

 実際には、こらら4つのカテゴリの中には表面的には見えない影があります。既存のある業界において、新しいマーケットプレイスモデルが古いマーケットプレイスを追い越す場合、通常ではフレームワークの中の活動の1つに革新を行い、新しい顧客体験を創出します。

 以下が新しく生み出された革新の例になります。

Legibility
〜マーケットプレイスの理解しやすさ〜

 最も基本的なところでは、マーケットプレイスの「わかりやすさ」とは、販売されているものを商品化するためのメカニズムにすぎません。eBayが世の中に広がる以前は、多くの中古品が屋根裏部屋や地下室に置かれていました。日本でのメルカリの広まりを考えればわかっていただけるかと思います。以前は、売り手にとっては使わなくなったものであっても、その品物を求めている潜在的な買い手が入手可能か理解することができなかったのです。eBayのカテゴリ分類と商品一覧リストのデータによって、側から見れば不用品に見えるものでも、その出品者はより見やすく分かりやすい出品が実現したことで潜在顧客とマッチングさせることが可能になりました。

 価格設定(または買い手と売り手が最終的な取引価格に同意すること)は、マーケットプレイスにおける「分かりやすさ」の問題のもう一つの形です。物理に存在している商品の価格設定は通常簡単ですが、サービスの価格設定は非常に難しいことが多いです。歴史的に、地域のサービスマーケットプレイスは、塗装、造園、一般請負のような仕事の価格設定の複雑さを経験してきています。彼らは買い手と売り手の間で紹介を行い、彼らがそのサービスを行っていました。これは、個人とプロのマッチングサービスを提供するThumbtackがそのインスタントマッチサービスで解決しようとしている問題です。サプライヤーが特定の変数に基づき、どのようにジョブの価格を設定するかのモデルを事前に設定しておくことで、買い手と売り手の価格設定プロセスを自動化し、変化するフィルターや嗜好に基づいてリアルタイムで価格の変更を行うことを可能にしています。

Matching
〜マッチング〜

 マッチングとは、買い手が売り手を見つけるまでの時間を短縮する機能であり、その逆もまた然りです。事実上すべてのマーケットプレイスは、検索、閲覧、サプライヤーランキングのいくつかの組み合わせにより、常にマッチングに取り組んでいます。

 しかし、検索コストが特に高いカテゴリーでは、そのマッチングへの優位性から差別化を図っているマーケットプレイスもあります。出会い系アプリは、主にマッチングの方法によってそれぞれの変化をつけています。Match.comは、文字通りアプリ名の中に差別化要素を入れ、プロフィールの精査とフィルタリング機能に重点を置いていました。

 同じく出会い系アプリのEharmonyは、マッチングプロセスの一部を自動化することを目的とした長いアンケートで、差別化をさらに進めていました。TinderはeHarmonyとは反対の考え方で、低品質のマッチングの代わりにより早いマッチングに焦点を当てた。Bumbleは、需要と供給の不均衡に対処するために、男性の検索コストを犠牲にして女性の検索コストを削減した。

Trust
〜信頼〜

 取引の中には、売り手が買い手に対して信頼できることを証明できないために、取引が成立しないこともあります。eBayは理解しやすさの問題を解決しましたが、信頼の面で依然問題が残っています。スニーカー取引プラットフォームであるGOATとStockXは、プレミア価値がつくようなスニーカーに対して、正規品証明プログラムと返金保証で逆にそのギャップを利用しました。そうしたことで、それ以来多くの買い手たちが、自分達が購入しているものは偽物ではないという確信を持つことができるようになりました。eBayは現在、独自の正規品保証を開始したり、$100未満のスニーカー取引の手数料を免除するなど、GOATやStockXに追いつくため総力をあげています。

 同様に、Airbnbの重要なイノベーションは、アメリカのテクノロジーやメディアに関するアナリストのBen Thompsonが「信頼のコモディティ化」と呼んでいるものです。ホストの審査、レビュー、保険を通じて、Airbnbは初めて信頼の面でホテルと競走できる事業者となった。

Risk
〜リスク〜

 リスクとは信頼の1歩先にあり、実際に取引に対して金銭的な責任を負うことである。マーケットプレイスは、取引リスクを引き受ける方法を模索するようになってきており、損失率を減らし、株式の代わりに負債を使って成長のための資金を調達することが可能になっています。

 セレクトショップ向け仕入れマーケットプレイスのFaireは卸売業界でこの問題を解決しています。以前は、小売業者は何が顧客に売れるかを理解するために販売員を頼るしかありませんでした。しかし、実際に何が売れているかについてのより多くのデータにアクセスできるようになったことで、Faireは販売員にはできないような、買い手のために取引を引き受け、小売業者が新しいブランドから注文するたびに支払い期間の猶予や無料の返品を提供することができるようになりました。これにより、買い手のリスクを軽減し、売り手のコンバージョン率を高めることができます。

Logistics, COGS, SG&A
〜物流、売上原価、販売管理費〜

 マーケットプレイスは、サプライヤーのコスト構造をより深く理解するようになってきています。彼らが最も力を入れて取り組んできた分野の1つが物流です。オンデマンドフードデリバリーサービスのPostmatesDoordashは配送の責任を負うことで、顧客体験を向上させ、Grubhubと比較してマーケットプレイスに出店できるレストランを拡大しました。そうすることで、彼らは取引率を15%から20%以上に高めました。

Postmates: Food Delivery, Groceries, Alcohol - Anything from Anywhere
https://postmates.com/

DoorDash enhancing no-contact delivery for coronavirus safety | NewsChannel  3-12
https://www.doordash.com/about/

 中小小売業者向けのECシステム代行サービスであるFulfilled by Amazonは、マーケットプレイス上の小規模な売り手のためにAmazonが代行することで物流問題を解決し、効果的で高い収益システムと引き換えにラストマイル配送を所有しています。

Creativity
〜創造性〜

 創造性とは、サプライヤーが販売するための新しい製品やサービスを思い描くプロセスです。これまで述べてきたフレームワークの他の要素とは異なり、マーケットプレイスが創造性を自社内において大規模に実施している例は基本的には0です。

 マーケットプレイスは、サプライヤーが各々の創造性を自社のプラットフォームに持ち込むためのインセンティブを作り出すことに長けているが、それは自分たちで創造のとは異なります。

 マーケットプレイスが独自の製品を作成する場合(例えば、Amazon Basicsのようなプライベートブランドなど)、彼らはマーケットプレイスからのデータを使用して何を販売するかを検討しています。つまり彼らはマーケットプレイス上の「本物」のクリエイターの最も成功した商品を派生させて販売しており(パクリとも言うw)その結果、GMV(流通取引総額)の一部を獲得しているに過ぎないのです。

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 今回の記事は少し長くなってしまうので、前半はここまでとなります。
次回の記事をお楽しみに〜!!

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